メジャーの最高峰クローザーのプライドを胸に、ヤ軍チャプマンは新人大谷に力勝負を挑んだ。1発を許せば逆転される緊迫感の中、5球すべて速球を投げ込んだ。高速スライダーを選択すれば、三振の確率は高いはずだった。

 「もちろん、その可能性は考えた。ただ、ストライクゾーンの中を積極的に攻めようと思ったんだ」。ためらいなく腕を振った164キロの速球で、遊ゴロに退けた。

 今季初めて8回表2死から「回またぎ」で起用する「4アウト・セーブ」。公式戦終盤やポストシーズンでは珍しくないが、序盤戦では「禁じ手」とも言える策だった。ただ、6回にはブルペンに連絡が入り、チャプマンも準備を進めた。ヤ軍ブーン監督は「通常、公式戦では必要ないが、今日はその1日。左対左というより、大谷はさらに危険な打者だから」と、「大谷封じ」のために封印を解いたことを明かした。

 役目を果たしたチャプマンが「いいスイングをしていた。彼のようないい打者と戦うために野球をやっているんだ」と言えば、ブーン監督は2人の対決を絶賛した。「いいバトルだった。見ていて楽しかったよ」。結果にかかわらず、万人にメジャーの醍醐味(だいごみ)を感じさせる5球だった。【四竈衛】

 ◆チャプマンの回またぎ 今季初。シーズン中の回またぎは珍しく、ここ5年では昨年が5試合、16年と15年が4試合、14年が5試合、13年が2試合。また、13年以降でこの時期に回をまたいだのは14年の5月19日のみで他はすべて7月以降。ポストシーズンでは昨年が3試合、カブスで世界一になった16年には5試合で回をまたいでいる。