流行語大賞選考委員のやくみつる氏(60)がイチローの引退会見を「明瞭に言葉を選んで、全部が文字起こしできてしまうぐらい。それだけで(流行語大賞の)トップ10ができてしまうぐらいの会見でした」と褒めた。

耳に残るフレーズの多い会見でもあったが、その中でも一番に挙げたのは『あろうはずもない』。後悔があるか? と聞かれた時に『今日のあの(東京ドームの観客が別れを惜しむ)光景を見せられたら、後悔などあろうはずもない』と出た言葉。やく氏は「外国人になったことで逆に日本語が研ぎ澄まされている。話し言葉の上手な人が、あえて文語めいた言葉を選んだ」と分析した。

『元イチロー』『おかしなこと言ってますか? 』などの言葉には「イチローという呼称がどうなるとか、中田英寿氏みたいに鈴木一朗氏となるのだろうか? これまた妙な感じ」と、発想を楽しみ「自分の表現の仕方、物言い、話す間合い、ジョークの入れ方など、かの国の人になってしまっているな。昇華したな」と感じたという。

言葉だけでなく事象そのものにも面白さを感じたそうで、イチローがアマの指導に興味を示したことに「中田も貴乃花も現場を離れてそっちへ行く。極めすぎてしまうと原点に返る。この傾向は何だろう。解放されると楽しくやっていたころに戻りたいと思うんでしょうか」とレジェンドたちの名前を並べた。

会見で、人望がないから監督は絶対無理と話したイチローに「でも、はいそうですか! とはいかない。彼の言葉を借りるならば、人望がない人なりの指導をしてほしい」とエールを送った。