【デトロイト(米ミシガン州)18日(日本時間19日)=四竈衛】エンゼルス大谷翔平投手(27)が、リアル二刀流の「1番投手」で出場し、日本人選手として初の大台となる40本塁打を放ち、投げては自己最長の8回を6安打1失点無四球8奪三振と好投し、今季8勝目(1敗)を挙げた。初の2桁勝利、さらに打撃2冠も完全に視界に入ってきた。

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試合が進むにつれ、大谷の体に組み込まれた投打の歯車が、徐々にかみ合い始めた。3回までは、毎回安打を浴びた。だが、それも想定内だった。打線が初回に2点を先行したことで、大谷はペース配分を逆算した。2巡目まではスライダー、カットボール主体で打たせ、球数を減らす作戦だった。だが、5回にソロ本塁打を浴びたことで、6回からは一気にトップギアへ上げた。

「四球がなかったことが一番。6回からは思い切り投げました。最後の方は全部三振を取るくらいのつもりで行きました」。序盤は150キロ前後だったフォーシームが、6回以降はすべて155キロ以上。1点差の展開でもあり、力でねじ伏せる配球に切り替えた。

マウンド上でのアドレナリンは、バットに持ち替えた第4打席でもあふれていた。8回無死。初球から完全な1発狙いのフルスイング(ファウル)で敵地のどよめきを誘った。続く2球目。甘く入ったスライダーを完璧に捉えると、着弾地を見届けるように、ゆっくりと走り始めた。試合後は「最後の1本はオマケ」と言った一方、「打った瞬間、行くなと思いました。チーム的にも個人的にも大きかったと思います」と率直に振り返った。

この1発で本塁打王争いで2位ゲレロ(ブルージェイズ)に5本差をつけ、打点王争いでも1差に肉薄した。「まだ終わっていないですが、(本塁打数が)30台から40台に移ったという意味では大きいですね。あまり気負うことなく、しっかりとその打席を作れればいいと思います」。

主砲カブレラの偉業が迫る敵地ながら、大谷の衝撃弾には大歓声が起こった。「敵地で応援してもらえるのはうれしいですね」。マウンド上で躍動し、打席では豪快アーチ。8勝目&40号のワンマンショーに沸く光景は、大谷が米国でも愛されるスーパースターになった証しだった。

▽エンゼルスのマドン監督(大谷について)「序盤は三振を取ろうとはしていなかった。だが、後半は各球種が良くなった。9回も続投を考えたが、疲れていた。ソロ本塁打を打たれたが、彼は点を取り返したかったし、特大の1発でやってのけた。彼はユニークなアスリート。特別なことを見ているよ」

▽タイガースのヒンチ監督「彼は途方もない特別な才能の持ち主。マウンドで圧倒し、40本塁打を放ち、試合を支配していた。ベースボールはグレートなスポーツということを証明する、大きな存在だ」

▽タイガースのスカバル投手「彼がマウンド、そして打席でやってのけていることは信じられない。シーズンを通してプレーしてホームラン数トップ、そして防御率2・70。現実的ではない。素晴らしい選手だ」

<大谷の記録>

◆エンゼルスの左打者で40本塁打は82年レジー・ジャクソンの39本を上回り球団史上最多。40号到達はグロース、トラウト、プホルスに続き4人目だが、チーム122試合目での達成は最速。

◆チーム122試合目での「40本塁打&15盗塁」到達は、98年ケン・グリフィーの117試合に次ぐメジャー史上2番目の速さ。この年のグリフィーは56本塁打20盗塁で本塁打王のタイトルを獲得した。

◆73年のDH制導入以降、投手で8回以上を投げ本塁打を放ったのは97年ボビー・ウィット、06年ジョン・ガーランド、同年クリス・ベンソンに続き4人目。

◆7月1日以降の防御率1・58はア・リーグ1位(5先発以上)。メジャー全体でもバーンズ(ブルワーズ)の1・55に次ぐ2位。