<オープン戦:フィリーズ4-6レイズ>◇6日(日本時間7日)◇フロリダ州クリアウォーター(6回表無死降雨コールド)

 【クリアウォーター(米フロリダ州)6日(日本時間7日)=千葉修宏】レイズ岩村明憲内野手(29)が、尊敬する先輩、フィリーズ田口壮外野手(38)の目の前で先頭打者アーチを放った。1回表、相手先発イートンから、左翼スタンドに豪快に本塁打を運んだ。岩村は「田口さんとユニホームを着てあいさつできて、ひと言、ふた言でも会話するだけで、僕はすごく励みになりました」と試合後も感激の面持ちだった。

 176センチ、85キロ。メジャーでは小柄とも言える岩村の、どこにこんな力があるのだろう。1回表。まっさらな打席に立つと、カウント1-0から、イートンの外角ツーシームをしばきあげた。打球はみるみるうちに左翼スタンドに。今季オープン戦1号となる先頭打者弾に、戻ってきたベンチでも笑顔がはじけた。

 日本人メジャーの中でも、流し打ちで本塁打を打てる打者はそうはいない。岩村は「みんな打てるでしょ。井口さんも打てるし、城島さんも打てる」と謙遜(けんそん)する。だが恩師中西太氏直伝の「タイミングとポイントさえ合えばボールは飛んでいく。柔よく剛を制すじゃないですか」(岩村)という技術は、口で言うほど簡単ではない。

 加えて、この日はあこがれの先輩の存在が力となった。試合前。アップ中だったが、田口を見つけると、ダッシュで駆け寄った。帽子とサングラスを取り、直立不動であいさつ。「(01年の)日本のオールスター以来。ひと言、ふた言でも会話するだけで、すごく励みになりました。気持ち良く試合に入れました」。それが会心の一打となった。

 感銘を受けているのは、田口の野球に対する真摯(しんし)な姿勢だ。「(カージナルスに移籍した当初)くさらずにやってきた、あの姿勢は見習わなければならない。野球選手の原点。今日も『オレには休みはないよ』ってひと言、言われたんです」。重い言葉をかみしめながらの打席だった。

 そんな岩村を、田口も温かいまなざしで見つめていた。「チームの中心になってるなという雰囲気がある。見てて、すごいなと思いますよ」と評価した。

 岩村はこの日の試合後、本塁打以上に、第2打席目の内容が重要だったと話した。2回表1死三塁から二ゴロ(記録は二失)で打点。「内野ゴロを打とうと思っていました。内野手が下がっていたんで。こういう打点は稼がないと。1番でも最低40~50打点は挙げないといけない」。この日は6回雨天コールドながら6-4でフィリーズに勝利。田口も認めるリーダー岩村の貢献は大きかった。