<アスレチックス1-2レッドソックス>◇1日(日本時間2日)◇マカフィーコロシアム

 【オークランド(米カリフォルニア州)1日(日本時間2日)=四竈衛】レッドソックス松坂大輔投手(27)が、今季初勝利を挙げた。米国内開幕戦となるアスレチックス戦に先発し、6回2/3を投げてわずか2安打1失点。2回裏に先制のソロ本塁打を浴びながら、遅いスライダーを効果的に使って無四球9奪三振と力投した。3月25日(日本時間)の凱旋(がいせん)登板で、制球に苦しんだ姿はなかった。また、2番手で救援した岡島秀樹投手(32)も1回1安打無失点で、松坂の白星をサポートした。

 責任を果たした安堵(あんど)感と、投げ足りないもどかしさを、同時に受け入れるしかなかった。2-1と1点リードで迎えた7回裏2死無走者。2回に1発を食らったカストを迎えて、ベンチから歩きだしたフランコナ監督の姿を、マウンド上の松坂は努めて冷静に見つめていた。

 松坂

 ブルペンで次の投手が用意しているのは分かっていましたが、ポンポンと2アウトが取れたので、交代させられることはまったく頭になかったです。できればもう少し投げたかったです。それだけの余裕もありましたから。

 いつもはダッシュが遅い高排気量のエンジンが、ようやく温まり始めた直後に余力を残しての交代。96球。もちろん続投できたはずで、納得ずくではない。それでも、首脳陣の意図も理解はできた。2番手岡島とグラブでタッチし、自らに言い聞かせるかのようにうなずき、ダッグアウトへ引き揚げた。

 7回2死まで2安打9奪三振。文句なしの投球の鍵は、カーブ並みに遅いスライダーだった。これまで時速130キロ台後半だったのを、時には約10キロ「減速」。140キロ台前半のカットボールと交ぜることで、相手打者のタイミングを外した。「どの打線に対しても緩急は使わないといけない。緩い変化球の制球が良かったですし、平均としてこれぐらいは続けていきたいですね」。3月25日の日本開幕戦。最も制球に苦しんだのがスライダーだった。「前回の反省を生かせた」と言えた根拠が、リリースポイントを一定にしたスライダーの制球だった。

 凱旋登板で帰国した1週間は、行きつけの美容室での散髪もできないほど多忙だった。再渡米後も、数日間は時差ボケに襲われ、体調は万全に程遠かった。だが、ベケット、シリングを欠くチーム事情もあり、柱としての自覚が、精度の高い投球へとつながった。

 勝利が決まった試合後。抑えのパペルボンが観客席へ投げ込んだウイニングボールを受け取ったファンに対し、お願いして取り戻した。届ける先は3月中旬に生まれたばかりの長男。「終わったことですが、できれば東京ドームでこういう形を出したかったです」。08年の1勝目。試合後の会見では淡々としていたが、ようやく穏やかに笑った。