<パドレス1-7ドジャース>◇4日(日本時間5日)◇ペトコパーク

 【サンディエゴ(米カリフォルニア州)4日(日本時間5日)=佐井陽介】黒田が快投デビュー!

 ドジャース黒田博樹投手(33)がパドレス戦(ペトコパーク)でメジャー初登板初先発し、7回77球1失点で初勝利を挙げた。最速94マイル(約151キロ)をマークし、3安打無四球とほぼ完ぺきの内容だった。専大時代、東都大学リーグで対戦した井口も3打数無安打に抑えた。06年3月にはWBCで王ジャパンが世界一に輝いた縁起のいい球場で最高のスタートを切った。

 黒田がナインとハイタッチを交わし、次々と肩を抱かれた。マウンド近くで勝利の儀式の最中、ウイニングボールをしっかり握っていた。トーリ監督から記念のスコアカードも手渡された。「勝利は自分でしっかりかみしめたい」。少しだけプレッシャーから解放された瞬間だった。

 メジャー初登板初先発でも地に足をつけた。1番ジャイルズへのメジャー1球目は91マイル(約146キロ)の速球だった。初回を3者凡退に仕留め波に乗った。最速94マイルの直球で押し、時にスライダーで交わした。ウイニングショットのフォークで空振りを奪い、そして内角シュートでゴロを打たせた。すべての球種を駆使して持てる力をすべて出し切った。

 黒田は「当然、緊張はあった。でも日本の時とほとんど変わらなく、普段通りできたと思います」。6回にはジャイルズに甘く入ったカットボールを右翼席に運ばれたが、これが唯一の失投だった。77球中、53球がストライクで無四球。省エネ投球で7回を3安打1失点に抑え、記念すべき初勝利を手にいれた。

 大量リードがなければ完投ペースだった。このオフに11年間で103勝と活躍した広島からFA移籍。今年1月、コンビを組んでいた倉捕手を呼び出した。「みんなで分けてくれ」。自宅の洋服、アクセサリーなどを贈った。名前、背番号入りの用具やウエアもチームメートに渡した。古巣と決別するつらい決断だったが、自らの夢を追った。

 3年契約で総額3530万ドル(当時約39億円)でドジャースに入団。周囲の目が厳しくなるのは覚悟の上だった。がむしゃらに成功を目指した。ロッカー室には10足前後のスパイクが山積みされている。メジャーの硬いマウンドに合うスパイクを探した。先月29日のレッドソックスとのオープン戦の試合前だった。黒田は人目も気にせず、1足のスパイクを持ってレッドソックス松坂の元に駆け寄った。アテネ五輪をともに戦った後輩に、自らアドバイスを求めた。

 試行錯誤を続けた。そして初勝利をつかんだ。ただ目標は先にある。「いい結果が出て良かった。少しでもチームに入っていけた。ただ今が終わりじゃなくスタートなので」。黒田の挑戦が、最高の形で幕を開けた。