<2007年7月25日付、日刊スポーツ紙面から>
【クリーブランド(米オハイオ州)23日(日本時間24日)=四竈衛】レッドソックスの若手左腕ジョン・レスター投手(23)がインディアンス戦に先発し、劇的な復活勝利を遂げた。昨年8月に発症したガンを驚異的な精神力で克服。11カ月ぶりとなるメジャー復帰登板で6回2失点と好投し、今季初勝利でチームの連勝を「4」と伸ばした。今日24日、松坂大輔投手(26)が12勝目を目指して先発する。
勝利を見届けたレスターは松坂ら他の選手と一緒に、ダッグアウトからグラウンドへ静かに歩を進め、ナインを出迎えた。「その瞬間を楽しめた。戻ってこれて良かったよ」。表情も口調も淡々していたが、胸の内には万感の思いがよぎっていた。
昨年8月23日。アナハイムで7勝目を挙げた直後のことだった。背中に違和感を感じ、そのまま、実家のあるワシントン州タコマで親類の医師から診察を受けた。02年ドラフト2位で入団。将来のエースとして嘱望され、すでにローテーションの一角を担っていた22歳左腕を待っていたのは、「成人非ホジキンリンパ腫」という、予想だにしないガンの宣告だった。
そこからは、野球人生以前に、生きるための闘いが始まった。年内だけで6回の化学治療を受けた。抗がん剤の影響で、頭髪は抜け落ちた。それでも、マウンドへの思いが薄れることはなかった。「とにかく野球が好きだから。1球目を投げるまでは興奮したよ」。
レ軍打線も援護した。初回に4点を先制。病魔に勝った男が、復帰戦で負けるはずもなかった。レ軍は4連勝でメジャー最速の60勝目に到達し、今季最多タイの貯金「21」。「本拠地のような雰囲気。レ軍のファンはすばらしいね」。難病を克服した23歳は、かみしめるように感謝の言葉をつぶやいた。
○…同僚レスターの復活勝利を、レ軍松坂も心から祝福した。春季キャンプ中には、松坂が腕の振りについてレクチャーするなど、陰ながら復帰登板までの道をサポートしてきた。「彼自身は闘病の苦しさは言いませんが、普通の病気と違うし、非常に大変だったと思う。今日は彼のためにあった試合だと思います」。自らは、今日24日の先発に備え、試合前にはマウンドの傾斜をチェックした。現在13勝と最多勝争いでトップを走る左腕サバーシアが相手だけに、力のこもった投げ合いが見られそうだ。
◆ジョン・レスター
1984年1月7日、米ワシントン州出身。高校時代は同州の最優秀選手に選ばれ、02年ドラフト2巡目(全体57位)でレッドソックス入り。昨年6月に初昇格を果たし、左腕では球団初のデビュー5連勝を飾った。闘病生活に入るまで7勝2敗、防御率4・76と先発ローテーションを守った。左投げ左打ち。188センチ、86キロ。今季年俸38万4000ドル(約4610万円)。
◆非ホジキンリンパ腫
悪性リンパ腫の分類型で、リンパ系組織に由来し全身に発生する悪性腫瘍(がん)。レスターの病型は「退化性大細胞型リンパ腫」だった。基本的に切除による治療は困難で、放射線療法および化学療法が一般的。症状が消えても5年間の経過観察が必要で、その間再発がなければ「治癒」となる。メジャーでは通算399本塁打のアンドレス・ガララーガ(元ロッキーズ)、NHLでは6度のポイント王に輝いたマリオ・ルミュー(元ペンギンズ)、ゴルフ界では93年の全米プロ王者ポール・エージンガーらがリンパ腫を克服し、現役を続けた。
大リーガーとがん
◆デーブ・ドラベッキー投手(ジャイアンツ)
左腕エースだった88年、利き腕にがんが見つかり、左上腕筋の3分の2を除去。翌89年の復帰戦で白星を挙げて感動を呼んだが、次戦で投球中に骨が砕けて引退。その後ガンが再発し、90年に左腕を切断した。
◆ジョン・クラック外野手(フィリーズ)
93年のワールドシリーズ出場メンバー。翌94年、こう丸がんを摘出して現場復帰。
◆ブレット・バトラー外野手
ドジャース野茂のチームメートだった96年、喉頭(こうとう)がん手術から復帰した。
◆エリック・デービス外野手
通算282本塁打の強打者。オリオールズ時代の97年、結腸がんを克服して01年までプレー。
◆カート・シリング投手(現レッドソックス)
フィリーズ時代の98年、かみたばこが原因で口腔(こうくう)内に見つかったがんの初期症状を除去。
◆ジョー・トーリ監督(ヤンキース)
99年3月、オープン戦中に前立腺がんが発覚。すぐに手術を受けたが5月まで指揮を執れなかった。




