<マリナーズ3-11レイズ>◇10日(日本時間11日)◇セーフコフィールド

 【シアトル(米ワシントン州)=四竈衛、木崎英夫通信員】マリナーズ・イチロー外野手(34)が、レイズ戦で2試合連続マルチ安打をマークした。今季からのテーマ曲「天城越え」を提供した歌手石川さゆり(50)が観戦する中、5打数2安打1打点1盗塁と、声援に応えるプレーを披露した。打率も3割1分まで上げ、リーグトップに1分2厘差まで迫ってきた。

 本拠地セーフコフィールドに流れる「天城越え」のメロディーが、打席に向かうイチローの耳にはしっかりと届いていた。いつもなら第2打席の前に伴奏されるのが、この日は特別に第1打席の前に変更された。「ちょっと」狙ったという「柵越え」こそ不発に終わったが、第3打席に遊撃頭上を越える安打を放ち、16試合連続安打をマーク。第5打席にも中前適時打を放ち、しっかりとネット裏の声援に応えた。

 これまでラップやポップス系の音楽を好んでいたイチローが、演歌に目覚めたのは昨年末の紅白歌合戦がキッカケだった。「何の気なしに見ていたら、1人際立っていたんです。力の入れ方、抜き方、そのバランスがものすごかった。僕には鮮烈で、和田アキ子さんとは違う存在感でした」。石川の抜群の歌唱力に、イチローは心を打たれた。

 その後、尼崎市内でコンサートがあることを知り、インターネットでチケットを購入。公演後には楽屋を訪ね、数々の「記録超え」が待ち受ける08年のテーマ曲として「天城越え」を使用したいと申し出た。「歌がどうというより雰囲気。歌詞の意味とか深さとか、僕には分からない。だから素人が純粋にね」。

 7月末には、日米通算3000本安打を超えた。今後は8年連続の200安打、張本勲氏が持つ通算3085本安打の日本記録が当面の目標。「試合を見に行きますと言って来ない人もいますが、石川さんは約束を守っていただいた。そういうところに自分と同じというか、そういうものを感じました」。有言実行。どんなに重圧があろうとも、今後もイチローは、それらを越えていくに違いない。