<社会人野球日本選手権:新日本石油ENEOS4-0日立製作所>◇21日◇京セラドーム大阪◇準々決勝

 メジャー挑戦する新日本石油ENEOS(神奈川)田沢純一投手(22=横浜商大高)が日立製作所(茨城)戦に先発し、4安打10奪三振で、2試合連続完封を決めた。レッドソックスのクレイグ・シプリー副社長兼国際スカウトら4球団のスカウトの前で格の違いを披露。4-0で破り4強進出した。88年の東芝以来20年ぶり2度目の都市対抗との全国2冠へ、あと2勝に迫った。

 レ軍ら4球団のスカウトが見守る前で、田沢は初回から飛ばした。1番丸山にカウント2-2から133キロのフォークを落とした。2者連続三振に切ると、4回には初戦の最速に並ぶ151キロをマーク。「この前より狙ったところにいった」。10奪三振で、2試合連続完封。相手を見下ろすように119球を投げ、格の違いを見せつけた。

 獲得に名乗りを上げるレ軍はシプリー副社長兼国際スカウトが視察した。前日は田沢の登板がなかったが、大会後にも行う交渉を前に、最終チェックを行った。他球団のスカウトとは一線を画す、一塁側スタンド後方の“定位置”で観戦。スピードを測ることも、ビデオを撮ることもなく、時折メモを取って見つめた。「どうして私が今の段階でメディアに対してコメントしなくてはならないのか」。リップサービスなどない。発した言葉に、本気度が詰まっていた。

 前日は登板がないままチームが勝利した。「昨日ブルペンで調整できたので、スタミナ面は大丈夫だった」。注目度は日増しに上がるが「プレッシャーはあるけど、注目を浴びている中で力を出せるのは成長していると思う」と実感する。

 練習ではすでに「松坂流トレ」を導入する。試合前のウオーミングアップなどで、アメフトのボールを使いキャッチボールをする。肩やひじを理想的に使わないときれいな回転にはならず、投球につながる。オフ期間を含めて、松坂など多くの大リーガーが取り入れる練習法で、田沢は都市対抗予選から導入。「自分が先発したら最後まで投げ切るつもり」。体のケアにも最善を尽くしている。

 20年ぶりの全国2冠まであと2勝。球数制限を設ける国、米国スカウト陣は悲鳴を上げそうだが、田沢は連投を志願している。【前田祐輔】