大リーグ・レッドソックス入りする意思を固めた新日本石油ENEOS・田沢純一投手(22=横浜商大高)が1日、成田空港から渡米した。到着後はレ軍の本拠地ボストンを訪れ、現地時間2日(日本時間3日)にメディカルチェックを行う予定。最終交渉の後、早ければ同3日にも正式契約、入団会見に臨む見込みだ。レ軍はアマチュア選手に対しては異例の3年総額400万ドル(約3億8000万円)の提示をしているものとみられ、1年目から40人枠に入るメジャー契約で大筋合意となった。(金額は推定)

 午後4時55分すぎ、田沢が成田空港に姿を現した。ジーンズに黒いパーカ、茶色のジャケットというラフな格好で約50人の報道陣から無数のストロボを浴びた。出発カウンターでチェックインを済ませると、同行した新日本石油ENEOS・前橋マネジャーに軽く笑みを浮かべて、別れを告げた。

 無言のまま、一般客向けの税関ではなく、隣の「乗組員専用」通路を通った。手には背番号「17」が入った、慣れ親しんだチームのスーツバッグを持った。午後6時25分、飛行機に乗り込む際も、一番乗りで搭乗。ビッグ契約を前に、アマチュア選手として異例の“VIP待遇”で海を渡った。

 行き先はボストンで、両親、弟も同行。終始無言で、緊張感を漂わせた。到着翌日の2日(現地時間)には契約に必要なメディカルチェックを行う予定。最終交渉を行い、早ければ3日(同)にも正式契約を交わす見込みだ。「レッドソックス田沢」の正式誕生は、間近に迫った。

 契約内容は3年総額400万ドル(約3億8000万円)だが、FA申請は6年後。これにより事実上、レ軍に6年間在籍することになる。地元ボストン・グローブ紙(電子版)はこの日(日本時間1日)、田沢が、米大リーグのレ軍入団に合意したと、スポーツ面のトップで報じた。プロ球界を経ずに、直接メジャー契約を結ぶ日本人は史上初で、地元の関心も高まる。

 9月11日のメジャー挑戦表明以降、争奪戦には10球団が興味を示した。条件提示した中では、レンジャーズの5年700万ドル(約6億6500万円)を筆頭に、ブレーブス4年600万ドル(約5億7000万円)、マリナーズ3年450万ドル(約4億2750万円)と高額が並んだ

 レ軍の条件は、正式オファーした他の3球団よりも低いとみられるが、金額以上の魅力が田沢の心を動かした。チームメートには「雲の上の存在」と語る松坂がいる。さらに最長2年間は2Aで育成するという将来を見据えたプログラムが用意されている。特にレ軍は2Aでの育成計画を重視。07年のワールドシリーズ第4戦で勝利投手になり、今季16勝の左腕レスターや、41Sの守護神パペルボンは1年間2Aで育成教育を受けた経緯がある。田沢も活躍次第では、ロースターが拡大する9月以降、1年目からメジャーデビューする可能性も十分ある。

 アマ球界NO・1右腕が挑む史上初の挑戦に、日米球界が揺れた。22歳という若さと、日本のFA選手のように肩がすり減った状態ではないことも、大きな魅力になった。入団に際しては代理人を採用せず、大久保秀昭監督(39)と相談しながら、最終的には自分の判断で決めた。家族を伴った最終交渉の後、正式決着を迎える。【前田祐輔】