<オリオールズ7-5ヤンキース>◇8日(日本時間9日)◇オリオールパーク

 【ボルティモア(米メリーランド州)=小島信行、大塚仁】巨人の元エースと4番がメジャーの舞台で激突した。オリオールズ上原浩治投手(34)が注目対決のヤンキース4番松井秀喜外野手(34)を完ぺきに封じ、08年ドジャース黒田博樹以来6人目の日本人メジャー初登板初勝利を飾った。このオフFA権で巨人から移籍。大体大時代からメジャー志向だった男が、ついに夢のマウンド、初白星を現実にした。「野球をやってきてよかった」と喜びを爆発させた。一方、松井は「負けたのは残念だが、彼には一生の思い出になる」と巨人時代の後輩をたたえた。

 上原がイニングを締めくくるたび、鬼の形相で叫び声を上げた。メジャーではタブー視されがちな試合中でのガッツポーズ。おきて破りでも構わなかった。それだけ勝ちたかった。

 上原

 自分が求めていた場所で投げたんだし、緊張はなかった。マウンドではずっと楽しんでました。野球をやってきてよかった。

 倒さなければならない相手がいた。巨人時代の先輩、松井秀喜だ。1回、いきなり先頭ジーターに四球を出し、2死一塁で松井を迎えた。初球フォークで空振りさせ、カウント2-2からのウイニングショットも同じだった。タイミングを外し二ゴロに仕留めバットも折った。3回には2死二塁からフォークで遊撃へのハーフライナー。最後は5回、2死二塁から直球で左飛。大量リードもあって、お役御免で交代した。

 上原

 (松井の)1打席目はすごく意識したけど、2打席目以降は9人のうちの1人と考えることができた。

 日本では“問題児”だったが、メジャーでは“優等生”に変身した。巨人時代にはミーティング中の度々の居眠りで、スコアラーやコーチ泣かせだった。そんな右腕がオ軍ではミーティングに真剣に参加。ベテラン捕手のゾーンも「居眠り?

 おれの前でそんなことをしたらビンタを食らわせてやる」と笑ったが、相手を真剣に分析した。

 友情にも恵まれた。エースのガスリーは、キャンプ中の宿泊先も近くで日系人の母親を持つ親日家だった。ガスリーにヤ軍打線の攻略法として「外角の球は強い。ポイントは内角球の使い方。そこへの出し入れがポイントだ」とアドバイスを受けていた。

 オープン戦の最終登板となった3日ナショナルズ戦では“仮想ヤ軍打線”で右打者へは内角シュート、左打者へはカットボールを多投し準備を整えた。試合中はボールボーイが丹念にボールをこねたため、表面がツルツルに滑り思うように制球できず、4回にはランサムに適時二塁打を浴び1点を失った。しかし三振ゼロも、変化球の握りを浅くし制球重視に切り替えた工夫が功を奏した。

 試合後、ウイニングボールには先発メンバー全員にサインをもらった。

 上原

 粘り強く投げられた。みんなに感謝しています。でもまだ始まったばかり。これからです。

 次回は中4日で13日(同14日)レンジャーズ戦に先発予定。家族を含め親類17人が駆けつけた試合で結果は出したが、相手も研究してくるため、まだ試練はあるはずだ。上原からUEHARAへ。巨人のエースだった男が、世界へ羽ばたく1歩をしるした。【小島信行】