<マリナーズ1-5エンゼルス>◇16日(日本時間17日)◇セーフコフィールド

 【シアトル(米ワシントン州)=四竈衛、木崎英夫通信員】マリナーズ・イチロー外野手(35)がエンゼルス戦の4回に右前打し、張本勲氏(68=野球解説者)が持つ日本最多安打記録の3085本を抜き、日本人選手では最多の日米通算3086安打をマークした。前日の試合で張本氏の安打数に並び、この試合は4打数1安打だった。オリックス時代の9年間で1278安打、マ軍では1808安打。プロ18年目の今季は大リーグ史上初の9年連続200安打、あと192安打とした大リーグ通算2000安打に挑む。

 イチローは幾多の記録を塗り替えてきたが、3086本目は別次元だった。92年7月12日ダイエー戦(現ソフトバンク)でプロ初安打を放って以来、誰も到達できなかった高さまで安打を積み重ねた。

 イチロー

 単純に、張本さんが頂から見ていた景色がどんなものかを感じてみたかった。今日、あのヒットで頂に登ったんですが、すごく晴れやかで、いい景色だった。すばらしいものでした。

 4回無死、カウント0-2。左腕ソーンダースが投げた145キロの速球をバットの芯でとらえ、一、二塁間を破った。セーフコフィールドのセンター電光掲示板には3086安打目を祝福する「A

 New

 Japanese

 Baseball

 Record」の文字が輝いた。一塁ベース付近でヘルメットを掲げたイチローは、祝福する地元ファンの姿を目に焼き付けるかのように見渡した。

 スタンドで観戦していた張本氏の前での達成。その喜びを、試合後はイチローらしく振り返った。

 イチロー

 張本さんの飛行機を延長しなくて良かった。明日(日本に)帰ると言われていたんで、やらなきゃいけないプレッシャーがあった。そのことが一番重要でした。

 1年前の青写真では、昨季中にクリアするつもりだった。今季開幕前で残り3本とあって、健康な状態であれば時間の問題。イチローにとっては、重圧と闘い続ける記録とは、また違う感覚で挑む節目だった。実際、昨季は毎打席のテーマソングとして歌手石川さゆりの「張本越え」にかけて「天城越え」を選んだ。だが今季は、米国のラップ系グループのアップテンポの数曲に変更。早い時期から「3086」の先にも視線を向けていた。

 イチロー

 チームと一緒にスタートしていたら(記録への気持ちが)違っていたかもしれません。張本さんが来てくれたことで変わったと思います。

 あと192本のメジャー通算2000本安打、さらにメジャー記録となる9年連続200安打など、挑む記録は続く。だがイチローは自らに重圧をかけることも、気負うこともなく、柔和な表情で前を見つめた。

 イチロー

 もうハードルを上げていく必要もないでしょう。とりあえずやって何が残るか、ぐらいの感じの方がいいんじゃないですか。一応、区切りがついたしね。その先を見ても、もうダルい感じがします。次の目標の数字?

 868ですかね。

 王貞治氏(ソフトバンク球団会長)の最多本塁打数をジョークにしたのも、昨夜、タイ記録達成直後、尊敬する王氏から祝福のメッセージが入っていたからだった。

 イチロー

 やっぱり王さんはすごいです。う~ん、すごいですね。

 年代こそ異なるが、球史に残る大先輩と同じ領域に現役選手として足を踏み入れた。これからも続くイチローの野球人生。本当の頂は、まだイチロー自身にも見えていない。【四竈衛】