<オールスター:ナ・リーグ3-4ア・リーグ>◇14日(日本時間15日)◇ブッシュスタジアム

 【セントルイス(米ミズーリ州)=四竈衛、大塚仁、木崎英夫通信員】マリナーズのイチロー外野手(35)が、バラク・オバマ大統領(47)のサインボールをゲットした。09年の大リーグオールスターが行われ、始球式のため球場を訪れた同大統領と対面。偶然にもお宝をゲットした。「ビッグファン(大ファン)」と言われたイチローは、大統領が見守る前で第1打席に右前打を放つなど3打数1安打。試合はア・リーグが接戦を4-3の1点差で制し、1997年から12連勝(1分けを挟む)を飾った。

 いつもはクールなイチローも、この日だけは、さすがに表情を崩しっぱなしだった。夢舞台と言われる球宴で試合内容は大接戦。それでも試合後の話題は一点に集中した。「オバマ大統領がすごかった。プレーよりどうしてもそっちが大きくなってしまいました」と振り返った。

 予期せぬことの連続だった。試合開始1時間前。クラブハウスを訪問したオバマ大統領と初対面した。前日の段階では「What’s

 up(元気かい)とでも言っておこうかな」と冗談を飛ばしていたが、実際に面と向かうと、それどころではなかった。「Nice

 to

 meet

 you,Sir(お会いできて光栄です、閣下)」と最上級の敬語であいさつした。

 イチロー

 「What’s

 up」なんて、とてもとてもそんな雰囲気ではなかったです。Sir(サー)なんて使ったのは生涯初めてですよ。

 大統領は、イチローの「大ファンなんだ」と明かし、「どうして外野からホームベースまでレーザービームが投げられるんだい?」と聞いた。イチローは「柔軟な筋肉があるからです」と答えたという。オバマ大統領は「とても印象的な男だった」と後で感想を漏らしている。

 今やどんな剛球投手が相手でもひるむことはない。だが、気さくな問いかけと、イチローの野球スタイルを踏まえた大統領の言葉には、さしもの天才打者も「驚きました。僕のことを知っていただいてることが感動でした。当たり前ですけど、雰囲気に圧倒されました」と背筋を伸ばしっぱなしだった。

 しかも、キッチリと「お宝」までゲットした。事前に関係者から「サイン禁止令」が出ていたにもかかわらず、「頼む気満々」(イチロー)で、ちゃっかりサイン用のボールを用意していた。そのボールが偶然にも大統領の足元にコロコロと転がり、空気を察した大統領が快くサイン。思惑通り?

 まんまと手に入れた。かつてヒーローとして見ていたマイケル・ジョーダン(NBA)やグリフィーJr.(マリナーズ)と対面した時とは違う、「ファン」の目線になっていた。

 イチロー

 こういう感じは久しぶり。別にあこがれていたわけではなかったんですが、魅力的な人、じゃなく、魅力的な方でした。

 グラウンドでは、第1打席に右前へクリーン安打。オバマ大統領は2回終了後に球場をあとにしただけに、数少ないチャンスで御礼安打を披露した。「良かったですね。それよりも、あの(ブルー)ジーンズには驚きましたね。うちの選手が履いてるような普通のやつでしたから」と、しっかりファッションチェックまでしてしまう。メジャーを代表するスーパースターとなっても、忘れがたい球宴となった。