<レッドソックス7-5タイガース>◇11日(日本時間12日)◇フェンウェイパーク

 レッドソックス田沢純一投手(23)がメジャーの洗礼を浴びながらも、初先発初勝利を挙げた。タイガース戦の1回に連打、死球、内野手の失策などで3失点。2回には報復による乱闘騒ぎもあったが、動じない。最速91マイル(約146キロ)の直球で、5回を4安打6奪三振3失点(自責1)。日本のプロを経ずにメジャー入りした23歳が、日本人メジャーでは史上2番目の若さでの勝利をゲットした。

 意外な選手からウイニングボールを渡された。午後11時30分過ぎ。田沢が白球を手にし、笑顔でハイタッチの列に加わった。勝利の瞬間にボールを持っていたバリテック捕手ではなく、ロッカーが隣同士のペニー。「早く取っておかないと(抑えの)パペルボンが(スタンドに)投げちゃうかもしれないからと言われて、もらえたので良かった」と、先輩の気遣いに感謝した。

 黒星デビューとなった7日のヤンキース戦から4日目で初勝利。「まさか初先発で初勝利できるとは思っていなかったので、うれしい。メジャーに上がるってことも急だったんで。最近の野球人生に関しては、急にレベルアップしてきていると感じてます」と、置かれている状況に戸惑いながらも勝利を喜んだ。

 緊張からか、立ち上がりは乱調だった。1死から2連打、4番カブレラには左手首への死球で満塁。次打者は遊ゴロに打ち取り併殺コースだったが、遊撃手の悪送球で失点。さらに四球と適時打で追加点を奪われた。2回には4番ユーキリスが、田沢の与えた死球への報復と受け取り激高。ヘルメットを投げつけ、タックルをかまして退場。その後、判定に抗議したフランコナ監督を含め両軍で3人の退場者が出る大荒れの展開となった。それでもルーキー右腕は、冷静だった。「3、4、5回と少し気持ちの余裕ができたから、よくなったと思います」と話す通り、3回には1死三塁から後続を連続で見逃し三振。4回は1番グランダーソン、2番ポランコを連続空振り三振に仕留めた。

 突然、昇格して初登板したヤンキース戦のサヨナラ被弾が頭から離れなかった。「(デビュー戦で)打たれたイメージが残っていた。今後どうなるのか、すごく不安だった」と本音を漏らす。相手は強打者ぞろいで、ア・リーグ中地区首位のタ軍。緊張、不安…。すんなりいかなかったのは、試合内容だけではない。6回終了時には激しい雨のため1時間21分中断。3点のリードもらい5回で降板していたため、ひたすら待つしかなかった。

 海を渡ってきた23歳の新人の落ち着きぶりに、ベンチも度肝を抜かれていた。フランコナ監督は「1回にいろんなことがあったのに、冷静さを失わなかった。彼は並外れている」と絶賛し、ファレル投手コーチも「乱闘の後のブルペンでのウオームアップでも、非常に落ち着いていたので驚いたよ」と笑った。次回登板予定は16日のレンジャーズ戦。現段階ではベケット、レスター、バックホルツ、ペニーに次ぐ5番手。腰痛で故障者リスト(DL)入りしているウェークフィールド、松坂の動向が気になるが、同コーチは「彼は、ローテの仕事を失うようなことは何もしていない」と、大きな信頼を寄せた。初先発初勝利という偉業を成し遂げたルーキーは、信頼と自信を得た。(ボストン=水次祥子)