レイズ岩村明憲内野手(30)が3日、ナ・リーグ中地区のパイレーツに電撃トレードされた。今季で3年契約を満了し移籍の可能性が高まっていたが、17年連続負け越しから再建を急ぐパ軍が熱心に働きかけ、補強が本格化するFA市場の解禁前に商談がまとまった。レ軍との契約でオプションだった岩村の来季年俸は485万ドル(約4億3700万円)で、現時点でパ軍の最高年俸。早くもチームの顔として、名門復活に一肌脱ぐことになった。

 またも岩村が再建請負人を託された。代理人から3日深夜の電話に気付かず、朝になって知らされた新天地は、3年連続地区最下位に沈むパイレーツ。今季は米プロスポーツ史上、ワースト記録を更新する17年連続で勝率5割に届かず、メジャーでも指折りの弱小球団だ。それでも岩村は「高い評価をもらって感謝している。(球団について)クレメンテは知っているし、海賊も好きなキャラクター。どうなるか不安だったが、これでトレーニングに集中できる」と、去就の早期決着を前向きにとらえた。

 現時点で来季年俸はチームトップ。40人枠に岩村より年長は33歳の控え内野手バスケスしかいない。今季も早々に優勝争いから脱落すると、ウィルソン遊撃手(マリナーズ)、Ad・ラローシュ一塁手、マクロース外野手(ともにブレーブス)ら高年俸順に主力野手を一掃した。20代の若手ばかりに切り替える、大胆な再建策の真っただ中。ただ二塁は06年首位打者サンチェス(ジャイアンツ)の穴が埋まらず、併せてチームリーダーになれる人材を求めていた。

 パ軍ハンティントンGMは「スピードがあってアウトを取るのが難しい選手。日本ではゴールドグラブの常連だったし、二塁への転向もスムーズにやっている」と高く評価した。今季チーム最多の73試合に登板した救援右腕ジェシー・チャベス(26)を惜しまず交換要員にしたことにも、岩村への期待感が表れる。復帰後の8月末から複数のスカウトで徹底調査し、手術した左ひざの完治を確認。本来なら移籍時に慣例の健康診断も、行わなかった。

 岩村は07年の米移籍1年目も、底辺からの出発だった。だが創設10年で最下位9回のレイズは、2年目にワールドシリーズまで進出。その過程を知る経験者の存在は、パ軍にとって大きな財産だ。ただ岩村も再建への道は険しいことを覚悟し、「若いチームだけど、自分の力を注げればいい。ピッツバーグでポストシーズンを目指したい」と意気込んだ。