「Boss,This
is
for
you(ボスこれはあなたのためだ)」。球場全体が歓喜に沸く中、バックスクリーンの巨大モニターに、オーナーのジョージ・スタインブレナー氏(79)へのメッセージが映し出された。07年、それまで絶対的な権力を持ち、「ボス」と呼ばれた同氏が、体調を崩して第一線から退いた。現在、車いす生活を送る元ボスへの言葉は、ヤ軍全員の思いだった。
世代交代後は、父譲りの強烈な個性を持つハンク氏(52)、球団経営の実務を握っているハル氏(39)の息子2人が共同オーナーとして実権を握った。07年オフ、当時のトーリ監督(現ドジャース)との再契約交渉の際、年俸ダウンかつ単年契約、さらには「Wシリーズ出場」の条項をインセンティブに入れたことに同監督が激怒して完全決裂。キャッシュマンGMとハンク、ハル兄弟がジラルディを監督として招聘(しょうへい)した。さらに、昨オフにはサバシア、バーネットの両先発、大砲テシェイラを次々に獲得。3人合計4億2350万ドル(約381億1500万円)もの資金を惜しげもなく投入し、FA市場を席巻した。周囲の批判の声など意に介さず、金銭に糸目を付けないスタイルは「スタインブレナー家の伝統」。新球場1年目でもあり、9年ぶりの王座奪還に、なりふり構ってはいられなかった。
一方で、投資に見合わなければ、バッサリと切り捨てるシビアなビジネス感覚は変わらない。MVPの活躍を見せ、今オフFAとなる松井の去就についても、ハンク氏は「松井は常に同じ働きをしてくれる。ただ、日曜日(8日)に会議を開く予定で、これから話し合っていく」と慎重な姿勢をみせた。名門復権の幕切れは、同時に2010年のスタートでもあった。【四竈衛】



