【シカゴ(米イリノイ州)9日(日本時間10日)=四竈衛、佐藤直子通信員】今季限りでヤンキースとの契約が切れる松井秀喜外野手(35)が、他球団へ移籍できるフリーエージェント(FA)申請した。同地で編成トップが一堂に会するGM会議が開幕。松井の代理人テレム氏とヤ軍の残留交渉がスタートするが、ヤ軍キャッシュマンGMは松井に関し「外野手としては考えていない」と明言。外野の守備を希望する松井とは隔たりがあるため交渉が難航するのは必至で、退団の可能性が出てきた。

 世界一の余韻も冷めやらぬ間に、早くもシビアな交渉がスタートする。シカゴ空港に隣接するホテルで始まったGM会議に姿を見せたキャッシュマンGMは松井との交渉に関して、「Wシリーズで活躍しても、活躍していなくても、我々の考えは変わらない。(双方の)未来にベストな選択をしたい。松井は指名打者と考えている。外野手としては考えていない」との見解を示した。

 前日、オーナーのスタインブレナー氏らと編成会議を行い、今季の反省点などについて意見交換。補強戦略について同GMは「まだ何も決まっていない。すべてはこれから」と言葉を濁したが、松井との交渉ポイントは大筋で定まっていた。松井が公式戦を通しても守備に就くことは皆無。外野候補が多い上に、来季はロドリゲス、ジーター、ポサダら主力のベテランに休養を与える意味でDHをローテーション制にしたい意向だ。松井の今季年俸1300万ドル(約11億7000万円)、今季成績(28本塁打、90打点)、手術した両ヒザには爆弾を抱え、来季36歳を迎える年齢などを考慮した場合、ヤ軍としては慎重な態度を崩さなかった。

 一方、松井の代理人テレム氏は、交渉開始直前の現時点で、白紙のスタンスを強調した。「今の時点では何も起きていない。我々はまだWシリーズ優勝の余韻を味わっている段階で、交渉モードには入っていない。今後2週間のうちに、彼が最もハッピーになれるようにするだけだ」と話した。

 同氏は松井が希望する優先事項については発言を避けたが、これまでに「守備に就きたい」と話してきた松井とヤ軍側に、見解の相違があることも否定できない。実際、05年オフに残留を前提に交渉し、ヤ軍側の強い要望で4年契約を結んだ当時とは、松井の置かれている状況も違う。今回の場合、両者の思惑の違いによって、一気に「交渉決裂=退団」へ動く可能性は高くなっている。

 この日、松井はテレム氏を通して、正式にFA選手として申請した。優先交渉権を持つヤ軍との交渉期限は、19日(同20日)の午後11時59分(米東部時間)までだ。そこで合意に達しなければ、獲得に興味を示す他球団との交渉に入る。今後の野球人生を見据えた松井のこだわりと、ヤ軍のシビアな戦略との隔たりは決して小さくなく、交渉が難航するのは必至。残留交渉は、リミットまでもつれそうな気配だ。