【ニューヨーク13日(日本時間14日)=大塚仁】ヤンキースからFA申請した松井秀喜外野手(35)が申請後初めて公の場に姿を見せ、来季の契約交渉について語った。市内で在ニューヨーク日本総領事から在外公館長の表彰を受けた際に口を開き、交渉の長期化も辞さない構えを見せたほか「来年はどこにいるか分からない」などと来季も守備につかせるつもりのないヤンキースとの距離感もにじませた。残留第一ではなく、徹底的に交渉した上で決断する姿勢がうかがえた。

 来賓を笑わせながら、松井は自らの立場を再認識していた。セントラルパークにほど近い総領事公邸での在外公館長表彰式で、あいさつに立つと冒頭から強烈なジャブをかました。「皆様こんにちは。ニューヨークヤンキースの松井秀喜です…と言っていいのかどうかちょっと分からないんですけど。一応そう言わせていただきます」。4年契約が満了し、9日にFA申請。ヤンキースの所属でなくなった微妙な立場が、表彰式のあいさつにさえ影を落とした。

 本格的な交渉はまだスタートしていない。超大物から動くFA市場を考えれば長期化も予想される。一刻も早く来季の去就を決めたいと思うのが自然だが、松井はきっぱりとそれを否定した。「それはないですよ。時間をかけてでもいいですし。僕自身は急いでいるというのはまったくないです」。19日(日本時間20日)が終わればヤンキースとの独占交渉権がなくなり、他球団との交渉が解禁になる。ヤンキースだけでなく他球団の話を聞き、納得いくまで交渉した上で決断するという姿勢を明確に打ち出した。長期化の覚悟はとっくにできていた。

 所属を離れたヤンキースとの関係は微妙な状況にある。キャッシュマンGMが「来年も松井はDH。外野手とは考えていないし、ノーチャンス」とGM会議で明言。外野手復帰の希望を持つ松井は「ヤンキースの考えは考えで、それは仕方ないと思います」と納得しながらも「僕自身はあくまでもその(守備につく)努力をしていく、ただそれだけです」とこだわりを捨てない姿勢を見せた。「とにかく必要とされるチームでやるという、それだけですね」とも言った。ヤンキース残留が第一ではない。よりよい状況でプレーできる環境が第一だった。

 表彰式では官公庁や経済界など、NY中から勢ぞろいした来賓を前に来季の決意も語った。「来年はどこにいるかまだ分かりませんが、どこに行っても、日本人の誇りを胸にプレーしたいと思っています」。「ヤンキースが好き」という気持ちに変わりはない。だが野球人生の大きな分岐点を迎えているだけに「好き」だけでも選べない。松井はじっくりと時間をかけて、メジャー8年目の居場所を探し出す。