【ニューヨーク19日(日本時間20日)=大塚仁】ヤンキースからフリーエージェント(FA)となった松井秀喜外野手(35)とヤ軍を含む全30球団との交渉が解禁となった。ワールドシリーズ終了から15日間が経過し、今季所属球団による優先交渉期間が20日午前0時(日本時間同日午後2時)をもって終了。ヤ軍はFA申請選手に対する再契約の手続きを期間内には行わず、デーモン、ペティットらと同様に松井もFAとなって市場に投げ込まれた。ヤ軍と他球団が横一線となっての自由競争がスタートした。

 静かに移籍市場の幕が開いた。優先交渉権を失う20日午前0時になっても、ヤ軍は松井らのFA申請選手に対して何らの動きも見せなかった。この日もヤンキースタジアムではキャッシュマンGMを中心とした編成会議が行われたが、大きな動きはなかった。

 4年前とは状況が変わっていた。松井が入団からの3年契約を満了した05年オフ。キャッシュマンGMは「松井とサインすることが最優先事項」と残留に全力を注ぎ、4年総額5200万ドル(約61億8800万円=当時)の大型契約で再契約にこぎつけた。慎重に交渉が重ねられ、最終的に合意したのはヤ軍が優先交渉権を失う2時間前だった。だが度重なる故障に悩まされた松井は35歳になり、米国の経済状況も悪化。ヤ軍にとり、もはや松井は他のFA選手と同じく「最優先事項」ではなかった。

 しかしヤ軍が優先交渉権を手放したことが、そのまま松井との決別を意味するわけではない。今季14勝を挙げたペティットは昨オフ、いったんFAになりながら今年1月26日になって残留が決まった。ベイ(レッドソックス)、ホリデー(カージナルス)ら大物FA選手の動向次第ではヤ軍が松井残留に力を入れる可能性もある。左打者に有利なヤンキースタジアムを本拠地としながら、今季合計52本塁打の松井とデーモンを手放すのはマイナスだとする声も米メディアには根強い。

 ただヤ軍はDH専任とみており、再契約のオファーをするという保証もない。キャッシュマンGMは早くから「時間がかかる」と長期戦を示唆。編成会議が終了後、オーナー一族のスタインブレナー家に報告を行ってから実際の交渉に取りかかる予定で、松井への態度が明確になるのは12月以降となる可能性が高い。一方でヤ軍及び他球団のオファーを待つ松井も「長くなりそうな感じ。時間をかけてもいい」と優勝直後から長期戦を織り込み済みだった。プロローグが終わり、他球団も巻き込んだ本格的な駆け引きが始まった。