【フォートマイヤーズ(米フロリダ州)2日(日本時間3日)=山内崇章】米独立リーグ「ゴールデンベースボールリーグ」の「チコ・アウトローズ」からドラフト指名された吉田えり投手(18=ユマ)が、元祖ナックルボーラーから師事を仰ぎ、米球界挑戦の意思を強めた。

 あこがれの人の前で精いっぱい腕を振った。日本のテレビ局による番組企画だったが、レッドソックスのティム・ウェークフィールド投手(43)から直接指導を受けた。夢見心地の中、後方には腕組みをした“本家”が仁王立ち。メジャー189勝、百戦錬磨のナックルボーラーが臨時コーチになってくれた。「本当に、こんな幸せってないなあって思いました」。練習後、声は喜びで上ずっていた。つぶらな瞳は、遠くを見ているようだった。

 サイドハンドから繰り出す山なりのナックルボールに変化が表れたのは、「手首を立てたままで固定してリリースしてごらん」と助言を受けてからだ。握り、ボールを押し出すタイミングを指導されると、ボールはすぐに低い軌道で揺れ始めた。受けたマイナー捕手も「まるでボールがダンスしているようだった。指導された直後から揺れが大きくなった」と、驚きの表情で感想を口にした。

 投手としての心構えも聞いた。「ナックルボールを投げることはとても勇気がいるんだ。コントロールだって難しい。ひとつ間違えば失投になって左翼席に運ばれる。自信をもってキャッチャーに投げることが何よりも大事なことなんだ」。この日、もっとも印象に残った言葉だった。

 独立リーグとの入団交渉はこれから始まる。この日聞いたウェークフィールドの言葉は確実に心を揺さぶった。

 吉田

 自信もついたし、勇気も出てきました。今日教えてもらったことを生かしてナックルをバンバン投げていきます。私の夢はウェークフィールドさんのような選手になること。

 女性である自分がプロを目指すきっかけになったのが、ウェークフィールドの存在だった。あこがれの人の助言は重かった。米球界挑戦へ、背中を強く押してくれた。