<オープン戦:メッツ6-5ナショナルズ>◇7日(日本時間8日)◇米フロリダ州ポートセントルーシー
【ポートセントルーシー(米フロリダ州)=佐藤直子通信員】開幕メジャーが見えた。メッツ高橋尚成投手(34)がオープン戦初登板のナショナルズ戦で初勝利を挙げた。4回から2番手で登板し、抜群の制球力で3イニングを1安打6奪三振無失点。変化球を低めに集め、内外角で揺さぶる持ち味を発揮して、相手打線を翻弄(ほんろう)した。予想を超える内容に、ジェリー・マニエル監督は「現時点では開幕メジャーに入ることは間違いない」と、この時期には異例の太鼓判を押した。
高橋は大きく息を吐くと快投ショーの幕を開けた。直球、シンカー、スライダーをテンポよくストライクゾーンへ投げ込んだ。わずか6球で2三振。9球目でようやくボールが宣告されると、球場から大きなどよめきが起きた。制球力のいい投手は米国で「グッド・コマンド」と評されるが、マニエル監督がその上を行く「ピンポイント・コマンド(針の穴を通す制球)」とまで命名した正確なコントロールで、流れを引き寄せた。
この日は先発ペレスが3回5失点と乱調だっただけに、高橋の巧みな投球が一層際立った。5-5の4回から3イニングを投げ、6三振無四球。打者11人に対し42球で34球がストライクだった。辛口で知られる地元メディアも感嘆した。試合後は、約9分半行われた監督会見で約7分が高橋の話題に終始するほどだった。
緊張の面持ちのマウンドだったが、そこは巨人在籍10年で79勝を挙げたベテラン。冷静さを失わずに、今ある瞬間を楽しんだ。主力クラスの選手にも強気で押した。「自信がなかったら、ここではやっていない」。外角高めの球を効果的に使いながら、低めに沈むシンカーで打者の目線をずらし、次々と三振の山を築いた。
圧巻は5回だった。先頭打者に三遊間を破られると、自らの一塁けん制悪送球と野選が重なり、無死一、三塁のピンチを招いた。流れが相手に傾いてもおかしくない場面で、次打者をシンカーで空振り三振。通算305本塁打のI・ロドリゲスには引き続きシンカーを意識させながら、内角速球で見逃し三振に仕留めた。続く元阪神メンチも左飛に打ち取り、ピンチを切り抜けた。
打者と対峙(たいじ)した一瞬に行われる駆け引きは、経験に裏打ちされた直感が支配する。捕手のサインに何度も首を振り、自分の感覚を重視した投球に、ワーセン投手コーチは「サンタナ並みの直感を持つ男だ」と2度のサイ・ヤング賞に輝くエースの名前を出して絶賛した。
マニエル監督は「現時点で開幕メジャーを選ぶとしたら、間違いなく入るだろう」と高評価。「ストライクを投げられるだけに、どんな役割でも任せられる」と話し、今後はオープン戦で先発登板する機会も与え、適性を確かめていく。
勝利投手も転がり込んだが、目標はメジャー昇格を果たした上での開幕ロースター入り。「上(メジャー)を見ながら、前向きにやっていきたい」。巨人からFA宣言してメジャー契約を目指したが、マイナー契約でメッツ入り。招待選手でキャンプに参加している。浮足立たず、視線をずらさず、ベテラン左腕が目標達成に全力を注ぎ込む。



