<オープン戦:エンゼルス0-4ドジャース>◇15日(日本時間16日)◇米アリゾナ州テンピ

 【テンピ(米アリゾナ州=大塚仁】エンゼルス松井秀喜外野手(35)が恩師に新天地での活躍を誓った。ドジャース戦に「4番DH」で4試合連続出場し、第1打席に入る際にはヤンキース時代に5年間をともにしたド軍ジョー・トーリ監督(69)とあいさつを交わした。ニューヨークで結ばれた師弟関係が、今度はカリフォルニアで敵味方として再現される。トーリ監督からは、敵にしたくない選手とエールを送られた。

 言葉はなくとも通じ合っていた。2回先頭。この日最初の打席に入る松井に、三塁側ベンチから声がかかった。「マツ!」。視線の先には帽子をとったトーリ監督がいた。すぐにヘルメットのつばに手をかけてあいさつを返した。「やはり不思議な感じはしますね」。勝負を超えて、特別な空気が横たわっていた。

 2人は吸い寄せられるようにして同じグラウンドで相対した。トーリ監督は前日14日に台湾遠征から米国に戻ったばかり。自チームの紅白戦もあったため遠征に帯同しない可能性もあったが、1回表終了時に球場に到着し拍手を浴びながらベンチ入りした。松井も3試合連続出場中で休養も考えられたが「4番DH」として4試合連続出場。3打数無安打に終わったが「ちょっとポイントがずれているけどスイング自体は悪くない」と前向きな気持ちになっていた。

 メジャーリーグの父と言ってもいい。「5年間一緒にやってきてたくさん助けられた。彼が監督だったからこそ7年間ヤンキースでやってこれて、現在もここにいられると思っている。すごく感謝してます」。巨人入団時からの恩師である長嶋茂雄終身名誉監督とも存在の意味合いは異なっている。「長嶋さんは高校卒業してから鍛えてもらったという感じ。トーリはちょっと違いますよね」。一人前に育ててくれた長嶋監督に対し、トーリ監督は一人前に扱ってくれた。不振のときも我慢強く接し、脱却の道を探ってくれた思いは今でも色あせなかった。

 教え子を見守ったトーリ監督は「どこに行っても戦力になる存在。彼を見るのは好きだが、相手に回すのはいい気分じゃないな。レギュラーで守るのはきついだろうが、守れるはず。開幕でどうなっているかを見たい」と期待を込めた。この日は2人が接触する機会はなかったが、数日前にアリゾナ州内のイタリアンレストランで遭遇していた。今後は同じカリフォルニア在住となるため、接触の機会は多い。「これから何度か会うでしょうから、楽しみは楽しみですよね」。初心に帰った松井の表情は晴れやかだった。