<マリナーズ4-2レッドソックス>◇25日(日本時間26日)◇セーフコフィールド

 【シアトル(米ワシントン州)=四竈衛、木崎英夫通信員】レッドソックス松坂大輔投手(29)とマリナーズ・イチロー外野手(36)の対決は、松坂に軍配が上がった。08年7月22日以来2年ぶりとなった対戦は、空振り三振、一ゴロ、三ゴロと3打数無安打に終わった。松坂は6回4安打1失点と、勝利投手の権利を得て交代したが、3番手の岡島秀樹投手(34)が8回に逆転打を浴び、白星は消えた。イチローは5打数無安打だった。

 胸に残る感情を、イチローと松坂は、まるで口裏でも合わせたかのように、そっとしまい込んだ。2年ぶりの対決は、3打席、全19球。結果は、3打数無安打と松坂の完勝に終わった。それでも、試合後の松坂に笑顔はなかった。

 松坂

 塁に出せば、それだけでピンチを迎えることになる。何が何でも抑えようと思ってました。

 力勝負を挑むつもりだった。23日(同24日)の試合前、直接あいさつに訪れた後、イチローが「大輔はかわいい」とコメントしたことに笑顔を浮かべる一方で「試合後にかわいいと言われたくはない」と真顔で反応した。

 その意思の表れが、第1打席の初球だった。時速約150キロでストライク。07年のメジャー初対決では、初球にカーブを投げ、イチローをがっかりさせたが、今回は違う。カウント2-2からスライダーで空振り三振。第2打席も速球でファウルを奪い、最後はチェンジアップで一ゴロに仕留めた。いずれも両軍無得点で迎えたイニングの先頭打者。こだわりを持ちつつ、試合に勝つことを最優先した。

 一方のイチローも、松坂との対決を積極的に振り返ろうとはしなかった。4打数無安打に終わった初対決当時、「あいつは特別な存在」と話したが、この日は素っ気ない言葉が続いた。

 イチロー

 ストーリーを作ったら?

 オレを巻き込まないでよ。

 3打席とも凡退したとはいえ、イチローならではの技術と気遣いも見せた。4回の第3打席。カウント2-3から4球連続でファウルでしのいだ。1点リードした松坂は、10球中9球速球と真っ向勝負を挑んできた。だからこそ明らかなボール球でも振りにいった。並の打者なら空振りするか、見逃せば四球だが、周囲だけでなく、松坂も、イチローもそんな結果は望んでいない。最後は151キロ速球に三ゴロに倒れたものの、イチローの強い意志が表れた打席だった。

 イチロー

 その駆け引きも、皆さんが思うほど簡単なものじゃない。

 2人の対決は、勝敗を分けるポイントにならず、松坂の白星も逆転負けで消えた。控え捕手ブラウンとの呼吸が合わず、首を何度も振り、投球間隔が20秒を超えることもざらだった。サイン違い、暴投などのミスも連続し、5四球。イチローとの対決に集中できるような状況ではなかった。

 松坂

 何とかチームが勝てるように試合を組み立てようと思ってました。

 松坂にすれば、イチローに完勝してもレ軍は黒星。一方のイチローにしても、マ軍は勝利しながら自ら5打数無安打と、ともに納得のいく結果ではなかった。両軍の今季直接対決は、残り2カード6試合。互いに尊敬、尊重し合う2人の「名勝負」は、まだ終わっていない。