日本通算107勝右腕の争奪戦が始まる。楽天岩隈久志投手(30)が21日、FA(フリーエージェント)権行使の申請書を球団に提出した。昨オフはポスティングシステム(入札制度)でメジャー移籍を目指したが、落札したアスレチックスと交渉決裂。かなわなかった夢の実現へ、FA宣言に踏み切った。マリナーズ、ナショナルズ、アスレチックス、ツインズ、パイレーツなどが本格調査を進めている。

 日本シリーズ終了から一夜明け、この日、FA申請手続きが解禁された。即日申請した岩隈は「夢であったメジャーに挑戦したい。仙台でたくさん応援されて本当に悩みましたが、チャンスをものにしたいと思い決断しました」と笑顔を交えながら、心境を述べた。

 複数球団が名乗りを上げるのは間違いないが、希望条件は「どこの球団、どこがいいというより、僕を必要としてくれているかが一番。そこで自分も成長できればいい」と答えた。さらに「必要とされるとは、登板機会のことか」と聞かれ「それは大きい。どれだけトライできるか。やはり先発で行きたい」と続けた。

 候補の1つはマリナーズだ。複数の米球界関係者が「マリナーズが動くのは確実。しかも、補強の優先順位で岩隈は高い位置にあると聞いた」と証言。今季ア・リーグ西地区最下位に沈んだマ軍が、再建の切り札に獲得を狙う可能性は十分ある。先発陣は10年サイ・ヤング賞のヘルナンデスがエースとして君臨するが、4番手以降は未定。岩隈なら即先発ローテ入りのチャンスは大きい。本拠地は本塁打が少なく投手有利とされ、打たせて取る投球スタイルにも適している。また、マ軍は岩隈がFA権を取得する前から長期間、調査を続けてきた経緯もある。

 ナショナルズも前向きだ。今月中旬に行われたGM会議で、リッツォGMが「彼には非常に興味を持っている」と発言した。他にもアスレチックス、ツインズ、パイレーツなどが本格調査を開始。岩隈は代理人ポール・コブ氏から「FA市場の動きは遅い。辛抱強く待て」と伝えられているが、今オフは有望なFA選手が少ないという追い風もある。

 正式にFA申請を行ったことで、今後、条件提示を含めた争奪戦が始まる。