【ダラス(米テキサス州)8日(日本時間9日)=広重竜太郎、四竈衛、佐藤直子通信員】ポスティング(入札)制度でメジャー移籍を目指すことを表明した日本ハム・ダルビッシュ有投手(25)の争奪戦が、早くも本格化し始めた。大リーグ機構はダルビッシュを入札制度による獲得可能選手として全30球団に公示。入札は東部時間の14日午後5時(日本時間15日午前7時)に締め切られる。以前から有力視されていたヤンキースが早速、強烈な先制攻撃を仕掛けたほか、レンジャーズ、ブルージェイズが敏感に反応。早くも「3強」の争いを、伏兵レッドソックス、大穴エンゼルスが追う状況となった。

 まぎれもない、参戦表明だった。これまでダルビッシュの話題に関して固く口を閉ざしていたヤンキースのキャッシュマンGMが、入札申請が明らかになった途端、次々に明瞭な言葉を並べた。「彼が極めて能力の高い選手であることは、だれもが分かっている。何チームが入札するかおもしろそうだ。ただ、彼の場合はかなりのビッグマネーが動くだろう」。メジャートップの資金力を持つヤ軍が、事実上、高額のマネー合戦に持ち込むことを公言。ライバルの他球団の機先を制すかのように、真っ向から先制攻撃を仕掛けた。

 同GMのダル絶賛は、さらに続いた。「彼のような有能な選手が米国に来ることは、球界にとってもいいこと。特に、日本人選手はメジャーの質を高めてくれる。ヒデキ・マツイがそうだったしね」。過去数年にわたってスカウト陣を日本に送り込み、入念にダルビッシュの調査を続けたヤ軍にとって、ダル獲得は世界一奪回へ向けた最大のポイントだった。

 無論、他球団も黙っているわけでもない。過去数年来、ダルビッシュに対してはヤ軍以上とも言われる密着マークを続けてきたレンジャーズの動きは、迅速だった。現地時間未明にダルビッシュの意思表明が伝わったにもかかわらず、この日は早朝7時前からスカウト陣に対してミーティングを招集。約2時間にわたってダルビッシュ獲得案について話し合った。既に今季中には、ダニエルGMが訪日して直接視察。レバインGM補佐は「彼は秀逸な投手。どのチームも入札手続きするのを待っていたと思う。これが最初のステップだ」と、ヤ軍に対抗するかのように、堂々と獲得意思を明かした。

 虎視眈々(たんたん)と狙っているのは、本命視される2球団だけではない。第3の対抗馬とされるブルージェイズのアンソポロスGMは、感情を表すことなく、淡々と言った。「特定の選手について話すことはないよ」。これまで日本人市場に関しての実績こそ薄いものの、ダルビッシュに関しては自ら訪日して直接視察済み。入札することは間違いなく、あとは金額次第だけとも言われる。

 入札金、年俸総額の総額で100億円以上とも言われるダルビッシュの入札事情。資金力、獲得熱意、チーム事情などから浮かび上がった「3強」を軸とする争奪戦は、大本命のヤ軍が先陣を切ったことで、ますます激化する雰囲気となってきた。