異例ずくめのポスティング移籍でメジャーに飛び込む。ヤクルト青木宣親外野手(30)が17日(日本時間18日)、ポスティングシステム(入札制度)で独占交渉権を獲得したブルワーズと2年契約でサインした。3年目の球団オプション(契約選択権)と破格の出来高も付く。同制度では前代未聞の「入団テスト」を要求され、正式オファーをもらったのが4日前。定位置の確約もないまま、現地午後4時(同午前7時)の期限2時間前に駆け込み合意に持ち込む「最遅」決着だった。青木は日本時間20日に東京都内で入団会見を行う。

 綱渡り交渉の末にブルワーズ青木が誕生した。ダグ・メルビンGM(59)は「五分五分だ」と破談も覚悟した前日から、「契約に近づいている」と午後2時過ぎに行われたカウンセルの引退会見でようやく笑みを浮かべた。その後2時間弱の間に正式サインを済ませ、最後の1人で青木をメジャー40人枠に登録した。

 昨年12月18日、ブ軍の落札判明直後から「波乱」含みの展開だった。日本駐在スカウトを置かないブ軍は情報が乏しく、青木を米国に呼んで異例の公開練習をリクエスト。現地時間8日にアタナシオ・オーナーを含む首脳陣総出で練習視察後も動きは鈍く、条件提示に至ったのは13日だった。青木は正式オファーから丸4日で、新たな人生の決断を下した。

 起用法についても「チャンスは与えるが、ブラウンの処遇が決まるまで確かなことは言えない」(同GM)と、定位置の保証はない。青木の本職センターは左モーガン、右ゴメスの併用制を敷いており、現構想はブラウンの代役レフト。昨季MVPの主砲がドーピング疑惑により、開幕から50試合の出場停止で復帰を許されるのは5月31日以降の見通しで、青木は短期間で結果を求められる。

 ただ同GMは初対面で青木の強い決意を感じていた。「彼は(契約に)出場機会を求めてこなかった。腕に自信があればこそだろう」とうなずき、「彼は日本でも多くの試練を克服し、首位打者に輝いた男だ。大リーグで挑戦したいという意欲にみなぎっていた」と感心した。期待感の表れが当初伝えられた1年契約ではなく、3年目オプション付きの複数年。金銭条件は不明だが、同GMは「かなりの額のインセンティブがある」と、出場試合や打席数に応じた出来高の存在を明かしている。

 今季陣容がほぼ固まったことで、同GMはさっそく「青木シフト」の構想を披露。ブラウンの復帰以降は、右翼ハートについて「マイナー時代に経験があるし、レネキー監督にもどうかとは伝えてある」と一塁手でも起用したいとした。また29日(日本時間30日)に本拠地ミルウォーキーで開催する球団イベントに青木を招き、ファンにお披露目したいとした。「我々はノリの実力に懸けた。試合でプレーする姿を見たい」。順当ならデビュー戦は4月6日(同7日)、本拠地で昨季世界一カージナルスを迎え撃つ。

 ◆青木宣親(あおき・のりちか)1982年(昭57)1月5日、宮崎県生まれ。日向高まで投手だったが、早大で外野手に転向。03年ドラフト4巡目でヤクルト入団。05年にプロ野球2度目の200安打を達成し、首位打者と最多安打、新人王を獲得。タイトルは首位打者3度、最多安打と最高出塁率2度、06年盗塁王、ベストナイン6度、ゴールデングラブ賞5度。通算打率3割2分9厘。175センチ、80キロ。右投げ左打ち。昨季推定年俸3億3000万円。家族は、テレビ東京アナウンサーだった佐知夫人と昨年10月に誕生した長女。