【サプライズ(米アリゾナ州)2月29日(日本時間3月1日)=高山通史】レンジャーズ・ダルビッシュ有投手(25)が、4月の開幕までに修正、適応すべきポイントが浮き彫りになった。キャンプ4度目の打撃投手として登板。正捕手ナポリとコンビを組み、初めてサイン交換をしてマイナーの打者と対戦した。計36球のうち1球だけ、呼吸が合わずに5度もサインに首を振るシーンがあった。視察した日本ハム前監督の梨田昌孝氏(58=日刊スポーツ評論家)は、捕手との意思疎通が課題と指摘し、成功のカギの1つに挙げた。

 空気が一瞬、張り詰めた。ダルビッシュとナポリの呼吸が合わない。4度目の打撃投手で、サインを使用して初めての模擬実戦で計36球。順調に投げ込んでいく中で、不穏なポイントがあった。最終の延べ6人目、マイナーの右打者バトラーへの4球目だった。

 カウントを想定していたもようで、ダルビッシュは5度、大きく首を振った。バックネット裏の米国人男性ファンが「また振ったぞ」と驚き、一部始終を見つめた。この日投じた全7球種のうち6球種目をナポリが提示し、ようやくうなずいた。鋭く落ちるスプリットで2人が一致するまで、もたついた。

 ダルビッシュは登板後、口を開くことはなかったが、日本球界で自身が築いてきたスタイル、野球観を伝えようとしたのだろうか。終了後の会見で女房役は突如浮上した難題を苦笑交じりに明かした。

 ナポリ

 どの球も完璧に投げようとしているように見える。難しいけれど埋めていけない作業ではない。

 投手はストライク先行でテンポを大切に、シンプルに試合を運ぶのが大リーグの基本。そのリズムを壊しかねない問題に危機感を、あらわにした。

 昨季までは、よくあるシーンだった。ダルビッシュは投球の組み立てで、絶対的な主導権を握っていた。日本ハム捕手陣の鶴岡、大野らは考えを尊重していた。サインに何度も首を振って、球種を選択することが普通だった。だがこの日見せたダルビッシュの日本式はメジャーで通用するのか。前日本ハム監督の梨田氏は疑問視した。

 梨田氏

 メジャーの文化に、あれだけ首を振られるというのはないだろう。コミュニケーションを取っていると思うので、それは何とか大丈夫だと思う。ただ5回も6回もと、やり過ぎるのはどうかなとも思う。

 バッテリーの戦略が緻密で配球の妙に意識が高い日本、力勝負に重きを置くメジャーとでは野球文化に違いがある。強硬にスタイルを貫けば、パフォーマンスでは十分に通用しても、思わぬひずみが生まれる可能性がある。

 梨田氏

 ダルビッシュには譲歩する姿勢が少しはあった方がいい。今の時期はまだ良いが、開幕までに改善が必要になってくる。

 2日(日本時間3日)の紅白戦で実戦初登板の予定。ダルビッシュと捕手で、露呈した不安要素の“ギャップ”を取り除くために試行錯誤するテスト期間が始まる。