【サプライズ(米アリゾナ州)1日(日本時間2日)=高山通史】レンジャーズ・ダルビッシュ有投手(25)が自由奔放なマイペース仕上げを容認され、初実戦へ向けての準備を完了した。キャンプイン後、初の紅白戦登板を翌日に控え、球団職員を捕手に見立てて「準投球練習」を実施。日本ハム時代と同じ独自のメニューを行った。メジャーは投手の球数の管理に神経質だが、レ軍は調整法についてダルビッシュに一任する見解を示した。2日(日本時間3日)の紅白戦から第1歩を踏み出す。

 ダルビッシュがおもむろに、右腕を豪快に振り始めた。投手全員が引き揚げた後、アメフト用の芝生のグラウンドが試運転の舞台になった。全体メニューが終了して静まり返った中で、キャンプをサポートする渡部国際スカウト相手にキャッチボールを開始した。少しずつ距離を伸ばし、最長約70メートルの遠投。今度は距離を縮めてバッテリー間と変わらないような位置までくると、同スカウトを座らせた。

 平地でウオーミングアップ用シューズで16球。キャッチボールの域を越えた力の入れ具合で、スライダーなども交えて投げ込んだ。日本ハム在籍時もトレーナーを相手に、よく行っていた「ルーティン」の1つ。紅白戦に備え、遠投も含めて約60球の肩慣らしをした。日本では当然だったが、監視と管理が徹底され、投手の調整が画一化されているのがメジャー。“禁じ手”の自己流調整だった。

 事前にコーチ陣らへ申し出て、許可されていた。そのシーンを視察していたのが、獲得に尽力した1人のオリックスで投手コーチ経験を持つジム・コルボーン環太平洋スカウト(68)だ。「個人的練習で、必要なら投げてもいいと言ってある。球数とか距離を制限する必要はない」。そんな日本スタイルの理解者の意見も反映されているもよう。戸惑いなく自分を貫ける土台が、既に整っていた。

 肘と肩は「消耗品」という考えが根強い大リーグでは、珍しい放任主義だ。レッドソックス入団時の松坂は、首脳陣が一挙手一投足をチェック。一般的なメジャー投手の調整法から逸脱しないよう、監視されていた。レ軍のおおらかなチームカラーの追い風を受け、ダルビッシュは初実戦へ「和洋折衷」でノビノビと、自分らしくスタンバイ。紅白戦3番手で1イニング限定の予定でベールを脱ぐ。

 ◆ダルビッシュの調整法

 1つのパターンにこだわることなく、状況に応じた引き出しを多数、持っているのが特長だ。昨季に限れば中5日、中6日などの登板間隔の変化に左右されず、主に先発する3日前に1度だけブルペン入りするのが基本スタイルだった。体の疲労度などの状態によって、その前後のランニング、ウエートトレーニングのメニューの負荷増減、変更をする。ベストパフォーマンスを発揮できるように逆算をして、登板まで仕上げていく。その過程で投球時の体の動き、動かし方を確認するために平地で、相手を座らせてキャッチボールを行うのも独特の手法の1つだ。