<オープン戦:マリナーズ8-13ホワイトソックス>◇21日(日本時間22日)◇アリゾナ州ピオリア

 マリナーズのイチロー外野手(38)が、日本凱旋(がいせん)前の最終戦を鮮やかな1発で締めくくった。ホワイトソックスとのオープン戦に「3番右翼」で出場。第1打席に右翼席へ出場2戦連発となる推定120メートル弾を運ぶなど、4打数2安打1打点と順調な仕上がりを見せた。メジャー12年目で初の凱旋開幕戦に向け、今日23日に帰国。新打法、新打順の3番に挑む12年のイチローが、日本で新たな側面を披露しそうだ。

 日焼けした顔に浮かんだ笑みが、充実感の表れだった。8回裏、第4打席に安打を放った直後、代走を送られても、イチローはダッグアウト最前列で試合終了まで見守った。これまでならバッグを肩に、即座にクラブハウスへ向かうところだが、この日は最後まで同僚の好プレーに拍手を送り、笑顔で出迎えた。そこには、公式戦が間近に迫った緊迫感はない。むしろ、試合を楽しみに待つ野球少年と同じような、屈託のない笑みだった。

 メジャー12年目にして初めて迎える日本での公式戦開幕。長時間移動かつ過密の変則日程であっても、これまでとは違う期待感も見え隠れする。「気持ちは行ってからですね。向こうに行った時の気持ちは分からないですから」。翌22日に出発を控えたイチローの言葉は、いつものように淡々としていた。その一方で、グラウンド上では、キッチリと結果を出して日本行きへの最終準備を整えた。

 初回の第1打席、ホ軍左腕スタルトの甘い速球に対し、一瞬だけタメを作り、完璧に振り抜いた。右翼福留が「打った瞬間、いかれたと思った」と、数歩だけ歩きながら見つめた打球。右翼後方のブルペンを越え、芝生席で弾む前に、イチローはゆっくりと一塁へ向かった。「ドンピシャじゃなかったらあそこまで飛ばないですよ、僕の体では。あれがズレていたら問題です」。珍しく、自ら「完璧」と認めるほど、鮮烈な2戦連発弾だった。

 新打順3番の役目を任され、右足の上げ幅を抑えた新打法で臨む今季。オープン戦はこれまでより少ない、ほぼ1日置きに出場。計10試合、わずか30打席しか立たなかったにもかかわらず、打率4割、2本塁打、8打点と、3番として文句なしの数字を残した。

 今季は、川崎、岩隈と日本人選手が加入。「(川崎が)ヒットだって一番打ってる(実際はチーム2位)し、オレだってやんなきゃ、って感じになるわね」。しかも、初めての凱旋試合。発奮しないはずはない。「3人で開幕のグラウンドに立ちたいと思います」。キャンプイン当日の2月19日、イチローが口にした思いは、1カ月後の今も変わっていない。【四竈衛】