<アスレチックス7-8マリナーズ>◇7日(日本時間8日)◇オークランドコロシアム

 文句なしのメジャーデビューを飾った。マリナーズ川崎宗則内野手(30)がアスレチックス戦で「9番遊撃」に起用され、公式戦に初出場。寝違えで首を痛めたブレンダン・ライアン遊撃手(30)の代役だったが2死一、二塁の好機で迎えた4回、左前に適時打を放ち、初安打&初打点で花を添えた。守備でも3度の守備機会を無難にこなし、1点差の辛勝に貢献した。

 川崎はちゅうちょなく、初球を狙った。イチローの中越え三塁打も出て3点を加えた4回。先発コローンの92マイル(約148キロ)速球を、ライナーで遊撃左を破った。「今日は1日足も震えてました。今日の試合が今までで一番緊張しました」と、憧れの夢舞台に立った現実を振り返った。

 一挙6点のビッグイニングにつなげる、貴重な一打。左翼手の送球エラーも重なって二塁に進んだ川崎は、ベース上で自軍ベンチに向かって左手を伸ばし、人さし指を立てた。首を寝違えたライアンに代わり、練習前に急きょ出場が決まった。「よっしゃ」と気合を入れすぎて、コーチからなだめられたほど感情が高ぶった。「皆が喜んでくれているのと、イチローさんから声が聞こえたので、それが一番うれしかったかもしれないです。本当におめでとう、というふうに心から言われまして。本当うれしかったです。この日は忘れません。今日は絶対に忘れられない日です」。その後ベンチに戻ると、イチローと抱き合い、喜びを分かち合った。

 この日を夢見ていた。ソフトバンクからFA宣言し、尊敬するイチローと同じチームに入団。しかし現実はマイナー契約で、キャンプには招待選手で参加した。それでもオープン戦は30球団トップの打率4割5分5厘と結果を残し、はい上がった。持ち前の明るいキャラクターで、フィールドでは臆することなく日本語を連発。キャッチボール開始前にはナインに1球1球ボールを渡す。打撃練習後には誰よりも多くボールを拾い集める姿もあった。野球に真摯(しんし)に取り組む姿勢が、異国でも通じないはずはなかった。

 地元メディアから、1人だけ対戦歴のある男として、ダルビッシュ対策として次戦での川崎の起用を聞かれたウェッジ監督は「1日休めば治るだろう」とライアン復帰を示唆。しかし昨季終盤に首の神経痛を患っており、回復状況によっては川崎に連続出場のチャンスが膨らむ。川崎はロッカー室で手渡された初安打のボールについて聞かれ「(他と)比べ物になりません」。満面の笑みを浮かべ、ダルビッシュの待つ敵地アーリントンへ向かった。【木崎英夫通信員】