<タイガース3-10レンジャーズ>◇19日(日本時間20日)◇コメリカパーク

 【デトロイト(米ミシガン州)=高山通史、佐藤直子通信員】レンジャーズ・ダルビッシュ有投手(25)が本領発揮の力勝負の連発で、2勝目を挙げた。3試合目の登板となったタイガース戦で移籍後、最多121球で最長の6回1/3を1失点と快投。カブレラ、フィルダーら強打者を真っ向勝負で圧倒した。過去2戦とは違い、生命線である直球の球威、キレともに急上昇。強力打線を2安打、5三振と封じ、光明が見えた。

 1球の軌跡が、メジャーで生き抜いていける確信につながった。白球の行方を見届けたダルビッシュは、狙い通りの結末にマウンドで小躍りした。3回、先頭打者に四球を与えて無死一塁。1番ジャクソンを2球で追い込み、3球勝負に出た。外角低めへ、この日最速タイ152キロ。完璧な見逃し三振に切った。安全圏とはいえない2点リードの試合序盤。自滅しそうなムードも漂ったが、この回を無失点で切り抜ける起点になった。

 手探りから、脱却した。6回途中5失点だった9日マリナーズ戦、前回の14日ツインズ戦も6回途中2失点。直球系はツーシーム主体でいなしていたが、この日は一変した。プレートも過去2戦とは違い、右本格派の主流で、日本ハム時代の定位置だった三塁側に軸足を置いた。内容だけではなく、すべてに原点回帰した。「フォーシーム(直球)は良かったと思います。全体的に良かった」との感覚から、過去2戦を断ち切れた。

 根拠があったから、モデルチェンジできた。「僕も最初の方はフォーシームでどんどんいって、途中から変化球を交えていってやっていきたいなと思ってましたけれど、トレアルバもそういうリードをしてくれました」。投球の組み立ての基本であるアウトローへの配球。多彩な球種を持っていても、大切な軸であることを再確認できた。だからこそ、強力打線に力勝負を挑めた。

 6回、昨季首位打者カブレラとの3度目の勝負。制球ミスして直球がほぼ真ん中に入った。右翼フェンス際まで運ばれたが、バットを押し込んでいた分、最後のひと伸びがなく右飛。本塁打、打点のタイトルを獲得したこともある強打者を、力で封じた。07年ナ・リーグの本塁打王フィルダーも無安打に抑え、大リーグ屈指の3、4番に、ほぼ完璧に投げ勝った。

 カブレラは「95マイル、96マイルの速球を投げてくるから、しっかり準備を整えておかなければならない」と、今後の対決に警戒心をあらわに。昨年のウインターミーティングで「ダービン」と呼ぶなど、ダルビッシュの名前も知らなかった名将のタ軍リーランド監督も、抑え込まれた自軍打線に怒りながら「素晴らしい速球と、打ちづらいカーブを投げていたな」と称賛した。

 右飛に打ち取ったあと、ベンチに戻るカブレラから擦れ違いざまにダルビッシュは「日本食レストランの名前を言われた」という。からかわれたのも、ライバルと認知された証拠だ。キャンプ中にはイタズラで同僚に「ワタシハ、ヘンタイデス!」などの日本語をレクチャー。溶け込む努力を惜しまなかったが、直球を軸にした本領発揮の2勝目で、2年連続リーグ制覇中のレ軍へ正真正銘の仲間入りを果たした。次戦は24日(日本時間25日)名門ヤンキース戦が濃厚。大舞台を経て、また階段を上っていく。