<マリナーズ0-4ホワイトソックス>◇21日(日本時間22日)◇セーフコフィールド

 苦労人からシンデレラボーイが誕生した。ホワイトソックスのフィリップ・ハンバー投手(29)がマリナーズ戦で史上21人目の完全試合を達成。9回2死、フルカウントから最後の96球目は外角低めに大きくワンバウンドでそれるも、代打ライアンのハーフスイングを認められ、捕手から一塁に渡って偉業は完結した。ハンバーは「あの状況で打者の気持ちを考えれば、真っすぐより変化球」と冷静だった。

 スライダー頼りの配球で成功した。「正直、7回くらいまでいいボールはなかった。でも、その後はいい感じで腕を振れた」と3回まで5球だったスライダーを、その後の59球中で27球を多投。9回先頭サウンダースに3ボールとして最大の「ピンチ」を迎えたが、フルカウントから空振り三振。27アウト中15アウトまで自信の勝負球で奪った。

 またイチロー封じにも細心の注意を払い、この日で通算9打数無安打のキラーぶり。捕手ピアジンスキーが「どこに投げてもバットを出してくるから、ゾーンを広く使うことが必要」とサインを見やすくするため右指に白いマニキュアを塗る工夫も生き、4回の三振はボール球を振らせた。

 04年のドラフトではバーランダー(タイガース)の次に指名されるエリートだったが、翌05年に右肘再建術を受けて暗転。メジャー初勝利まで6年を要し、ホ軍には昨年1月にウエーバーで拾われた。昨季は8月にインディアンス福留のライナーが顔面を直撃し、2週間戦列を離れた。今季から同僚の福留も「本人が一番喜んでいたのでは」とベンチで快投を見守った。

 通算まだ12勝目だが、30先発目でのスピード到達。ハンバーは妊娠9カ月のクリスタン夫人に朗報を伝え「びっくりして(予定より早く)生まれてこないか心配したよ」と第1子へ最高の前祝いとなった1日に感謝した。【木崎英夫通信員】

 ◆フィリップ・ハンバー

 1982年12月21日、米テキサス州出身。ヤンキースのドラフト29巡目を拒否して進学。03年に胴上げ投手でライス大を初の全米一に導き、04年ドラフト全体3位でメッツ入り。06年に初昇格し、08~09年はツインズ、10年8月にロイヤルズでメジャー初勝利。昨季は初めてローテーション入りして9勝9敗、防御率3・75。191センチ、95キロ。右投げ右打ち。年俸53万ドル(約4240万円)。<完全試合メモ>

 ◆内訳

 メジャー135年の歴史で21人、近代野球とされる1900年以降でも19人(うちワールドシリーズで1人)しかいないが、最近4年で4人が達成。

 ◆初屈辱

 マリナーズは過去にノーヒット負けは2回だけで、本拠地では初の屈辱。1人の投手にノーヒッターを許したのは96年5月14日のグッデン(ヤンキース)以来。ホ軍からは18度目のノーヒッター誕生で、1位ドジャースの20度に次ぐ。公式戦で3度の完全試合は単独1位。

 ◆スピード達成

 ホ軍OBロバートソンが22年に、通算5先発目で達成という記録が残る。メジャー通算30先発以下、同12勝以下ではハンバーが2人目。