【アーリントン(米テキサス州)26日(日本時間27日)=高山通史】メジャー史上最高の救援右腕、ヤンキースのマリアノ・リベラ投手(42)がレンジャーズ・ダルビッシュ有投手(25)へ、アメリカン・ドリーム実現への成功哲学を伝授した。野球小国パナマ出身ながら昨季、メジャー歴代最多602セーブの偉業を達成。24日(同25日)のヤ軍戦で快投したダルビッシュの才能を高く評価した。自分の経験をもとに、大リーグでステップアップしていくために必要な心得を贈った。

 成功者特有の優しい瞳で、太平洋を渡ってきた若き日本人右腕を迎え入れた。名門ヤ軍一筋18年、今季も守護神の座を張るリベラから見ても、自軍の強力打線をねじ伏せたダルビッシュの印象は強烈だった。最速97マイル(約156キロ)をマークし、高い技術で多彩な変化球を操る投球スタイル。確信したことがあったという。

 リベラ

 クラブハウスのテレビでもブルペンからもずっと見ていたよ。いいコースを突いていたし、球を低めに集めていた。今後、彼は多くの成功を収めると思うよ。球場、ボール、言葉も違うが、ユウ(ダルビッシュ)はすばらしい。その良さは、誰も奪うことのできないものだ。

 本物は本物を知る。ダルビッシュはヤ軍打線から、メジャーでは自己最多10三振を量産。リベラの投球の約9割を占めるとされる、代名詞の宝刀カットボールも操った。自分は直球との2球種だけで頂点を極めたが、対照的な特異な才能、投球センスに目を奪われた。

 リベラ

 投げた球種すべてが良かったじゃないか。カッターにしても良かったよ(笑い)。まだ25歳と若いが、彼は40歳の投手のように、自分が(試合の局面で)何をすべきかを理解していたが、それはすごいことだ。あとは常に自分のベストを尽くすことだ。

 リベラはメジャーでは決して若くはない20歳でプロ入り。ダルビッシュと同じように異国から、しかも野球大国とはいえないパナマから挑戦して大成した。少なからず似通ったキャリア、重なるハングリー精神…。ダルビッシュに伝えたいことがあった。行き着いた先は、技術論ではなく精神論だった。

 リベラ

 自分のやりたいこと、やるべきことを、忍耐強く、練習し続けていくことだ。自分の欲求を持ちながら、謙虚に学び、より強くなりたいという希望を持ってやり続けること。そうすれば、いい投球ができる。

 日本でも周囲を圧倒するストイックさで野球と向き合い、同じステージに立ったダルビッシュ。リベラは自負も交え、頂点に君臨していくために、あえて厳しく求めた。

 リベラ

 そのために、自分はやるべきたくさんのことをやってきたんだから。

 ダルビッシュが誓った世界NO・1投手の称号への道を開く、シンプル・イズ・ベストの金言で締めた。

 ◆生い立ち

 1969年11月29日、パナマ生まれ。プロサッカー選手を目指したがケガで断念し、一時漁師で家計を支えた。19歳で本格的に野球を始めるも遊撃手では芽が出ず、20歳の90年2月にテスト入団でヤンキース入り。契約金50万円程度。

 ◆実績

 607セーブ(S)、890完了は歴代1位。防御率2・22は同2位(1000投球回以上)。ポストシーズン通算42Sは2位リッジ(ナショナルズ)の18Sを大きく引き離す。3度最多Sに輝く。

 ◆横顔

 愛称は「Mo」、また人気ゲームキャラから「スーパーマリアノ」。全球団の永久欠番に指定される前からジャッキー・ロビンソンの背番号を付けており、現役で1人だけ「42」を着用。今季年俸は1500万ドル(約12億円)。