レイズから戦力外通告を受けた松井秀喜外野手(38)は、今後の去就について、引退か巨人復帰かの二者択一の決断をする可能性が高くなった。新天地で結果を残せず、メジャー球団からのオファーを受ける可能性は低い。また、マイナーでのプレー続行に対しては松井自身が消極的。開幕当初のように自主練習をしながらオファーを待つこともできるが、現役続行を選ぶならば、受け入れ態勢を整えている古巣の巨人入りが一気に現実味を帯びてくる。松井の決断が注目される。

 松井の現状は極めて厳しい。現地24日夜、ボルティモアの宿舎でレ軍ジョー・マドン監督の部屋に呼ばれ戦力外通告を受けた。同監督によれば、松井はチャンスを与えてくれたレ軍に感謝し、貢献できなかったことをわびた上で「少し考える時間がほしい」と話し、翌25日早朝に、レ軍の本拠地、タンパに向かった。今後は自宅のあるニューヨークに戻る予定だ。

 今後の公式的な手順では、他球団へのトレード、自由契約、マイナー行きを前提としたウエーバー手続きのいずれかの選択肢を取る。ただ現状で、松井に米球団からのオファーはない。現実的に、米国に残ればレ軍とマイナー再契約か、開幕直後のように自主練習をしながらオファーを待つしかない。だが、松井は希望すれば自由契約となれるため、日本球界復帰への選択肢が残っている。

 日本球界の野球協約では、7月31日までに契約する必要があり、交渉などを詰める時間に余裕はない。ただ、巨人はどんな状況でも松井を受け入れる準備がある。現在、巨人は首位独走を固めつつある。一般的な常識では大きな補強をする必要はない。だが長年の功労者である松井に対しては、特例が確認されている。

 すでに原監督には松井獲得の確認を済ませ、原監督自身も松井入団を歓迎してる。ともにプレーした経験のある阿部、高橋由もチームの主力にいて、存在の大きさを認識している。期限は短いが、受け入れ態勢は整っている。

 渡辺球団会長はこの日、「本人の気持ちを聞いてみないと、オレはよく分からない。ジャイアンツを出ていく時も、口では言えず、手紙を受け取ったんだ」と、松井への配慮を忘れなかった。原沢GMも「彼は今現在、アメリカのルールの中にいる選手。こちらからどうこう言えることはないし、適切ではない」と、慎重な姿勢を崩さなかった。一方で「彼はジャイアンツの選手。どうなるかは、常に気にしています」とも話した。巨人軍にとって松井秀喜は特別な選手だ。09年6月、当時の滝鼻オーナーが「近い将来日本に戻ってくるなら、やはり巨人に帰ってきてもらいたい」などと述べ、昨年就任した白石オーナーも「同じですよ」と踏襲している。

 首位を走る巨人の現有戦力だけを見れば、強打の野手を緊急補強する必要性はない。だが松井の位置付けは、それらの客観的事情を超える。松井の大きな決断に備え巨人は待つ。