<レッドソックス5-1ロイヤルズ>◇27日(日本時間28日)◇フェンウェイパーク

 【ボストン(米マサチューセッツ州)=四竃衛】大輔が、勝ったー。レッドソックス松坂大輔投手(31)が、昨年6月の右肘靱帯(じんたい)再建手術を乗り越え、477日ぶりの勝利を手にした。故障者リストから復帰したこの日、ロイヤルズ戦に先発し、7回5安打1失点(自責0)6奪三振2四球と力投。今季初勝利、メジャー通算50勝目を飾った。この日の快投で、当面のローテーション入りを確保。6年契約の最終年とも残り1カ月ながら、来季以降の野球人生へ向けて再スタートを切った。

 たくましさに、確かな自信を携えて、松坂が戻ってきた。昨年5月8日以来、実に477日ぶりの白星。昨年6月の右肘手術をはじめ、相次ぐ故障を乗り越えた末、ようやくつかんだ勝利を、松坂は自然体のまま、受け取っていた。

 「手術から復帰してなかなか結果も出なかったですから、もっと込み上げてくるものがあるかな、とも思ってましたが、そうでもなかったですね」

 約2カ月ぶりとなるメジャーのマウンド。ただ、6月9日の復帰登板時とは、心も体も変わった。当時は、帽子の裏に「感謝」と書き込み、復帰できた感慨に浸った。一方で、体は一流レベルと対等に戦える状態には程遠かった。思い描く軌道の球が投げられず、「自分の状態が分からない」とこぼすほど、不安だらけだった。

 それでも、焦りや戸惑いはなかった。昨年6月、手術を決断した時点で、長期的な視点を重要視した。復帰マウンドを目指すだけでなく、「40歳まで投げるために」スケールアップする命題を自らに課した。ボールを投げられない期間、炎天下のフロリダ州フォートマイヤーズで黙々と走り込み、自宅から球場まで約20キロの距離をロード用自転車で走り、下半身をいじめ抜いた。強い上半身に頼りがちだった投球フォームから「古いサビ」を落とし、下半身主導の新フォームを模索し続けた。

 投球スタイルも、力勝負に立ち返った。6回表2死一、三塁のピンチでは、捕手のサインに首を振り、相手打者が待つ速球を投げ込み、94マイル(約151キロ)の最速球で空振り三振を奪った。それでも、松坂の満足感は完全ではない。

 「今シーズンは、あまり高いものを求めようとは思わないです。それは来年以降だと思っています」

 故障者リスト入りする直前の7月2日、強烈なブーイングを浴びせた地元ファンが、この日は総立ちで拍手。契約最終年で、来季の松坂の処遇は決まっていない。ただ、大型トレードで主力選手を放出したレ軍再生を願うかのように、松坂の再スタートは力強かった。