<マリナーズ2-1エンゼルス>◇2日(日本時間3日)◇セーフコフィールド

 好投を続けるマリナーズ岩隈久志投手(31)が「市場価値」を急騰させた。5連勝中のエンゼルスを8回途中まで5安打に封じ、先発では初の無四球無失点で6勝目を挙げた。サイ・ヤング賞候補の右腕ウィーバーに投げ勝つなど、ウェッジ監督も「ベストピッチング。この打線を相手に十分すぎる内容だ」と絶賛。先発に定着した後半戦は防御率2・18と株を上げており、今オフ再びFAになる残留交渉で主導権を握った。

 先発NO・2に上り詰めた自信の表れでもあった。岩隈は「ホームで3連敗はしたくなかった」と、リーグ打率2位の強力打線にひるまなかった。新人王とMVPの同時受賞なるかで話題のトラウトには3回2死三塁、追い込んでからスライダー狙いを直感し、「球種を変えました」と意図的にセットポジションを解いた。ウェッジ監督が「経験に裏打ちされた投球」と感心したクレバーな修正力を発揮し、注目新人を3打数無安打に封じた。

 5安打のうち4度まで走者を三塁に進めた。それでも「真っすぐが走っていたので大胆にストライクを取れた」と直球を軸に、並み居る看板打者を封じて得点を許さなかった。6回2死三塁で三ゴロに倒れたプホルスを「本当に低めに球を集めていた」と渋い表情にさせ、知将ソーシア監督を「裏をかかれた」とうならせた。投手戦でも今季ノーヒッターを演じ、勝率8割を誇ったウィーバーに土を付けた。

 8回1死から連打を許し、球数が100球を超えて降板。ベンチに戻るまで2万5000人のスタンディングオベーションは鳴りやまなかった。

 7月2日に初先発し、ローテーション定着から2カ月でヘルナンデスに次ぐ2枚看板まで駆け上がった。この8試合は防御率1・59の安定感を誇り、ホーム最近19戦で16勝を挙げたチーム躍進の象徴的存在になっている。

 前半戦はロングリリーフで出番も限られていたが、ウェッジ監督は「初球を見たときから、試合をコントロールしてくれるような気がしていた。間違いなく、私が見た中でベストな投球だ」とすっかり見直した様子。マ軍から契約延長を持ちかけるのが有力な情勢だが、1年契約で年俸150万ドル(約1億2000万円)と格安なため、FAになれば争奪戦にも発展しそうな気配。ただ岩隈は今季残り試合に集中し、「もう次が始まっていると思います」と好調アスレチックスを迎える次回8日(日本時間9日)の登板を見据えた。【木崎英夫通信員】

 ◆岩隈の今季契約内容

 基本年俸を150万ドルと低めに抑え、最大340万ドルに達する出来高でカバーする契約を結んだ。ただ項目は先発起用を前提にしており、先発登板数20試合以上から、投球回数140回以上から発生するという。いずれも今季中に到達するのは絶望的で、出来高はほぼ発生しないものとみられている。