<ア・ワイルドカードゲーム:レンジャーズ1-5オリオールズ>◇5日(日本時間6日)◇レンジャーズボールパーク

 【アーリントン(米テキサス州)=高山通史、佐藤直子通信員】レンジャーズ・ダルビッシュ有投手(26)のメジャー1年目が、無情に幕を閉じた。新設されたワイルドカード(WC)ゲームのオリオールズ戦に先発。首付近をつるアクシデントに見舞われながらも6回2/3を5安打3失点(自責2)と力投したが、強力打線が沈黙して敗戦投手となった。勝てばヤンキースとの地区シリーズへ進出できた大一番を前に、メジャー1年目を終えた。悲願の世界一奪取は来年以降へ持ち越しとなった。

 誰よりも早く、ベンチから姿を消した。終戦の瞬間。ダルビッシュはグラウンド、守り抜いたマウンドに背を向け、足早にクラブハウスへ向かった。一戦必勝の使命が課せられた大一番で好投はしたが、散った。気持ちを整理して臨んだ会見。瞳は澄んでいたが「(実感は)ないですね。こんなに早く終わるとは…。僕だけではなくファンの人も、みんな思っているでしょうし。(今後)何をすればいいか分からない」と、やりきれない思いを吐き出した。

 味方の失策絡みで1回に先制点を許したが、粘った。「こういう試合なのでKOされても何をされてもチームが勝つことが一番」と、肝に銘じていた。どこまでも投げ切る覚悟を見せたのが、三振を奪うまでの過程。7三振のうち4個が3球三振。遊び球なしでテンポ良く、球数を抑えた。ボールの扱いに苦しみ、コーチとは意見の食い違いもあった。すべての面で適応に苦慮するとの周囲の声をはねのけた1年目の最終局面。メジャーリーガーとしての仕事を全うし、変身した証明だった。

 6回に犠飛で勝ち越された直後には、首のあたりが「つったみたいになった」。マウンドにワシントン監督やトレーナーが集まったが、ストレッチをして続投を決断した。大一番に中4日で臨んだ。執念を込めた集大成の91球は、報われなかった。

 ポスティングシステム(入札制度)を利用し、落札球団が注目されていた1月。周囲によれば、一時は日本ハム残留を視野に入れ、心が揺れたこともあったという。好感を抱いていた球団の1つ、レ軍に決まったという一報に腹は決まり、つぶやいたという。「楽しみですね」。2年連続ワールドシリーズに進出しながら敗退。世界一を狙うチームから指名された。自分の力で導く決意を強くした。公式戦を全力で駆け抜けて与えられた晴れの座。第1関門で躍動したが、無念の節目になった。「気持ちとしたらマラソンを走れって言われて走って、30キロ地点で『さぁ、スパート』っていうところで止められたみたいな、そういう感じ」と無念さをにじませた。

 心身ともに余力を残して、激動の1年に幕を下ろした。フル稼働して公式戦29試合、プレーオフ1試合を投げ抜いた。未来へと続く軌跡は、しっかり残した。