西武から海外FA(フリーエージェント)権を行使してメジャー移籍を目指していた中島裕之内野手(30)が17日(日本時間18日)、アスレチックスと合意した。正遊撃手として期待されるだけでなく、2年契約で総額650万ドル(約5億2000万円)に3年目は球団が選択権を持つ好条件。18日(同19日)に入団会見を行う。昨季は、ヤンキースに入札されながら交渉が破綻したものの、1年後に好条件で夢をかなえた。

 中島が、日本人遊撃手の新たな可能性を広げる契約を勝ち取った。FAとなったドルーがレッドソックスと1年950万ドル(約7億6000万円)での合意が伝えられてから約7時間後、中島の獲得が報じられた。アスレチックスは正遊撃手を求め、ゴールデングラブ賞3回受賞の中島も、慣れ親しんだポジションでのプレー機会を求めていた。両者の思惑が合致したものだった。

 数年来、日本人内野手、特に遊撃手の評価はいまひとつだった。基本に忠実な一方で、肩の強さ、スナップスローなど身体能力は米国人、中南米系の選手に見劣りすることもあり、メジャーのスカウトからは「日本の遊撃手は、米国では二塁か三塁」と明言する声も聞かれた。昨オフ、ポスティングシステム(入札制度)で落札したヤンキースは内野の控えとして交渉。今回、中島に興味を示したダイヤモンドバックスやカブスも、三塁手として調査を進めてきた。ア軍は中島を遊撃手獲得リストの上位にランク。補強を終えて撤退したダ軍に代わり、争奪戦の先頭に立っていた。

 ア軍にとっては中島の勝負強い打撃も魅力だった。ビデオ映像で打撃をチェックしたボブ・メルビン監督が「いい打者だと思う」と好印象を口にするなど、強打の内野手を必要としてきた。しかも、今オフ内野手のFA市場は、大物不在の「売り手市場」。スクタロ(ジャイアンツ)、ケッピンジャー(ホワイトソックス)ら中堅クラスが好契約を結ぶなど、市場も追い風だった。

 実際、2年契約の年俸は年平均に換算すると今季の推定年俸2億8000万円とほぼ同等で、しかも3年目の球団オプションは550万ドル(約4億4000万円)の好条件を手にした。さらに、背番号も「3」を用意しているとみられ、期待度の表れと言っていい。

 もっとも、メジャーでは実績のない選手に対して、最初から定位置を与えることはない。まずは、春季キャンプ、オープン戦で結果を出さない限り、開幕スタメンもない。過去、日本人野手がシーズンを通してメジャーの遊撃を守ったことがないだけに、来季の活躍、プレースタイルは、今後の日本人野手の評価にも影響を与えそうだ。