【パラダイスバレー(米アリゾナ州)9日(日本時間10日)=四竃衛】昨季限りで現役を引退した松井秀喜氏(38)に対し、ヤンキース時代の恩師、ジョー・トーリ氏(72=大リーグ機構副社長)が、“松井監督”の成功に太鼓判を押した。同地で始まったオーナー会議に出席した同氏は、松井氏との思い出を語る一方で、今後の活躍を期待。近日中にも直接会うプランを進めており、メジャーを代表する名将から松井氏へ、ヤ軍の「帝王学」が継承されそうだ。また、巨人原辰徳監督(54)も、松井氏が指導者として日本球界に戻ることを強く望んだ。

 松井氏への思いを語るトーリ氏の口調は、自然と熱くなっていた。報道陣から「いい指導者になれるか」という問いを受けると、同氏は「彼が望む通りになれる」と断言した。

 指導者は未経験の松井氏だが、同氏は選手としてのプレースタイルの中に名将としての素養を見いだしていた。ヤ軍時代を思い出しながら、その理由を語った。

 (1)チーム優先の野球観

 1年目の03年オープン戦。トーリ監督は松井にエンドランのサインを出していいか尋ねると、松井氏は即座に「あなたの望むように」と答えたという。

 トーリ氏

 それまで年間50本塁打を打ってきた選手に、そんな質問をすることなんて普通じゃない。ただ、それからは私にとって最高のエンドラン選手になってくれたよ(笑い)。彼はチームで何をすべきなのかを知っている。

 (2)チーム打撃の徹底

 自分の成績を度外視し、常にチームにとってベストのプレーを心掛けてきた松井氏の姿勢は、名将にも印象的だった。

 トーリ氏

 多くの打者が引っ張りたがる3ボールからでも、ワールドシリーズのグランドスラムのように中堅に打ち返すのがうまかった。今でも彼が反対方向に犠飛を打つ姿が目に浮かぶんだ。彼は点を取るという自分の仕事をよく分かっていた。本当のプロだったよ。

 (3)人間としての魅力

 グラウンド内外の態度、考え方も高く評している。

 トーリ氏

 規律を考え、守る存在だった。他人に左右されることもない。

 松井氏の引退会見後は、まだ直接話してはいない。だが、近日中にもニューヨークで会う計画を進めているという。その際、選手時代にはできなかった話だけでなく、ヤ軍のチーム力学、指導者論などを話すことになりそうだ。

 トーリ氏

 彼はスペシャルだった。彼の経歴の一部に携われたことは、特権のようなものだったよ。

 世界一4回の名将から松井氏へ-。盟主ヤ軍の「帝王学」が、日本球界の宝にも受け継がれる。