<エンゼルス3-11レンジャーズ>◇24日(日本時間25日)◇エンゼルスタジアム

 レンジャーズのダルビッシュ有投手(26)が、メジャー強打者をフォーシームで抑え込んだ。力勝負で6回3安打無失点の快投を見せ、同地区宿敵のエンゼルスから今季4勝目。前回に続く2ケタ奪三振(11個)は、球団史上3位タイとなる通算11度目となった。18イニング連続無失点という圧倒的な投球で、先発ローテーションの柱たる姿を見せつけた。

 ダルビッシュは力強いフォーシームで、遠慮なくストライクゾーンに攻め込んだ。メジャーの強打者を相手に、回転のきれいなフォーシームで攻めることは危険だとも言われる。だが力強さとキレ、そして配球の妙があれば、主導権を握るのは投手だ。今季初めて軸球としてフォーシームを選択。手元で鋭く曲がるスライダーを決め球に、時折カーブでアクセントをつける投球術で、強力打線を手玉に取った。

 プホルスには真っ向勝負を仕掛けた。第1打席には、時速95マイル(約153キロ)ほぼ真ん中のフォーシームで空振り三振。第2打席は外角やや高めに投げ込んだ97マイル(約156キロ)のフォーシームで中飛に打ち取った。2打席で合計6球のうち5球がフォーシーム。ワシントン監督に「メジャーで最も危険な打者」と言わしめる敵軍主砲を力でねじ伏せた。

 4回2死で迎えたハミルトンの打席では、こんな場面もあった。この日初めてのカーブで初球を空振りとした後、なかなかサインが決まらずにピアジンスキー捕手がマウンドへ向かった。短く言葉を交わした後の2球目は、この日最速の98マイル(約158キロ)のフォーシーム。ボールだったが、「キレというか、力がすごくあった」という軸球に対する自信がみなぎっていた。3回のボアジャスとの対決では4球目に球場の球速表示で99マイル(約159キロ)も計測(公式記録は96マイルの約155キロ)した。

 マウンド上で時折笑みを浮かべながら、テンポよくアウトを積み重ねられる背景には、ピアジンスキー捕手の存在がある。「僕は自分の投げたい球を投げるピッチャー」というダルビッシュは、今季からコンビを組むベテラン捕手に「大人が子どもをあやすような感じで受け入れてくれる」と感謝。ピアジンスキーも「捕手として、球を受けていて楽しいんだ」と相思相愛だ。

 リーグ首位タイの4勝目を挙げても、「まだ4月」と浮足が立つことはなく、早くも視線を次戦30日(日本時間5月1日)ホワイトソックス戦に向けた。【佐藤直子通信員】

 ▼ダルビッシュは今季、打者123人と対戦して被本塁打ゼロ。大リーグで120人以上と対戦した26投手のうち、被本塁打ゼロはウェインライト(カージナルス。対戦144人)と2人だけ。ア・リーグではダルビッシュだけだ。昨季は191回1/3で14本許したが、今季は改善している。日本ハム時代の渡米直前3年間(09~11年)は、被本塁打率(9回あたりの本数)でパ・リーグ規定到達投手の最少。本塁打を打たれない代表格だった。

 ▼日本人投手が4月までに4勝したのは96年野茂(ドジャース=4勝)02年石井(ドジャース=5勝)04年石井(同=4勝)08年松坂(レッドソックス=4勝)昨季のダルビッシュ(4勝)に次ぎ6度目。

 ◆ツーシームとフォーシーム

 シームとは「縫い目」。日本語で『直球』と訳されるのがフォーシームで、人さし指と中指をボールの縫い目に交差させて握る。球をバックスピンさせて投げた時、ボールが1回転する間に縫い目(シーム)が4度現れる。球の後部にできる空気の渦が小さく、きれいに浮き上がるような球筋で変化がほとんどなく、最もスピードが出る。

 ツーシームは2本の縫い目を縦向きにして、人さし指と中指を縫い目に沿って握る。ボールが1回転する間に縫い目が2度現れる球種。球の後部の空気の渦が大きく、フォーシームよりスピードは落ちるが、打者の手元で微妙に変化する。変化の方向は投手によって異なり、指先の繊細な感覚が必要とされる。

 通算355勝を挙げ「精密機械」と呼ばれたマダックス(元カブス)もツーシームを得意とし、大リーグではゴロを打たせる目的のツーシームが現在は主流。フォーシームはクレメンス(元ヤンキース)らパワー投手が武器とした。