<ダイヤモンドバックス5-4レンジャーズ>◇第2試合◇27日(日本時間28日)◇チェースフィールド

 【フェニックス(米アリゾナ州)=四竃衛】レンジャーズのダルビッシュ有投手(26)が、交流戦のダイヤモンドバックス戦に先発し、自己最多タイとなる14奪三振、メジャー最速で今季100奪三振に到達する快投を演じながらも白星を逃した。軌道の異なる「3種のカットボール」を軸に奪三振ラッシュ。8回裏に痛恨の同点2ランを浴び、7回2/3を7安打4失点で降板。8勝目はならなかったが、改めて能力の高さを披露した。

 最後に打たれたのは、そこまでダルビッシュの投球を支えてきた球だった。2点リードで迎えた8回裏1死一塁。2ボールから真ん中低めへのカットボールを右翼へ運ばれた。その瞬間、頭を抱えそうになったが「あれしかない。僕が信じて投げているボール。うまく打たれたという感じですね」と言いながらも「どんな投球をしても勝たないとダメ」と本音を漏らした。

 1回は使える球種を探りにいった。1、2番打者に初球を連打され、わずか2球で先制された。2点目の犠飛とも、打たれた球種は左打者へのツーシーム。早いカウントから振ってくる初対決の相手に対し、その時点で「軸球」をカットボールに定めた。

 同球種に偏ると危険性も増す一方で、並外れた器用さが生きた。通常のカットボールは小さく横へスライドするが、ダルビッシュの場合、縦へ落ちるバージョンもある。さらに、右手首を打者方向へ押し出すようにカットすると、浮き上がるように横滑りする軌道にも変化する。カットボールだけで3種類。空振りを取るためではなく、ゴロやファウルを打たせてカウントを整えるうえで、最大限に活用した。「カットが良かったのでAJ(ピアジンスキー捕手)もそれが分かって、多かったんだと思います」と振り返った。

 実際、自己最多タイの14奪三振の最終球は、スライダーとカーブで10個、ツーシームを含めた速球で4個と、カットボールではフィニッシュしていない。だが、最速156キロの速球に頼り過ぎず「軸球」を絶妙に投げ分けられる技量で、両リーグ最速100奪三振につなげた。「野球は三振を取る競技ではないですから。調子のバロメーターにはならないと思います」と、数字は気にも留めていない。8回に同点2ランを浴びて8勝目はならず、チームはサヨナラ負けでダブルヘッダーを2試合とも落とした。それでも、メジャー2年目で奪三振王を独走する底力に、今や異論を唱える者はいない。

 ◆両リーグ最速100奪三振(K)

 ダルビッシュは今季100Kにメジャー一番乗り。日本人投手では過去、メジャー1年目のドジャース野茂が95年6月29日にナ・リーグ一番乗りで到達したことはあるが、両リーグ最速では初めて。また5月中の100K到達は日本人初。メジャーでも5月中の到達は02年シリング、ジョンソン(ともにダイヤモンドバックス)以来。