<ホワイトソックス8-1ヤンキース>◇5日(日本時間6日)◇USセルラーフィールド

 米球界に激震が走った。大リーグ機構は薬物規定に違反したヤンキースの主砲アレックス・ロドリゲス内野手(38)ら13選手に出場停止処分を科した。ロドリゲスの出場停止期間は、8日以降の今季残りと来季全試合の計211試合という異例の厳罰。これに対し、ロドリゲスは選手会を通じて異議申し立てを行う意向を示した。処分が確定するまでは出場可能となり、ホワイトソックス戦には「4番三塁」で今季初めてスタメン出場。大ブーイングの中、プレーした。

 敵地ファンから大ブーイングを浴びても、ロドリゲスは顔色ひとつ変えなかった。2回表の今季初打席で左前打を放っても、罵声が聞こえないかのように一塁ベースを踏みしめた。「グラウンドに出てプレーすることは楽しいよ」。苦境に追い込まれた中、ふてぶてしさと純粋さが同居したかのような表情だった。

 今年1月、マイアミのクリニックが09年から昨年まで大リーガーに禁止薬物を提供したと地元紙が報じた。その疑惑について、大リーグ機構は調査に動き、この日、13人の処分を一斉に発表した。中でもロドリゲスは調査の妨害や証拠隠滅に動いたとされ、初違反としては異例の211試合出場停止処分が科せられた。その発表を受けて試合前に会見を開き、「残念なこと。この7カ月は悪夢のようだった。自分の人生の中で最悪の時期だった」と心境を語った。

 その一方で、昨季のプレーオフ以来となるメジャー復帰についてはしんみりと言った。今季は左股関節の手術の影響で出遅れ、くしくも復帰の日が出場停止処分の発表と重なり「18歳の時、フェンウェイパーク(ボストン)で初めてプレーした時のことを思い出したんだ。ユニホームをもう1度着られてうれしい。高いレベルでプレーできることを証明したい」。20年前のデビュー戦に思いをはせ、グラウンドに戻ってきた感慨を表現した。

 もっとも、処分軽減を求めて異議申し立ての手続きを進める意向とあって「話すべき時が来たら話したい」と、禁止薬物使用については明かさなかった。厳罰の背景には、処分内容を不服とするロドリゲス側に機構側が態度を硬化させたとの情報もあり、審議は長期化する可能性が高い。大弁護団を擁するロドリゲスとの調停はシーズン終了後の11月までもつれた場合はポストシーズン最後まで出場可能だ。

 「自分の人生のために闘っていく。自分のことは自分で守らないと、誰も守ってくれないから」。厳しい処分と世論を受けながらも、試合後は新恋人と思われるブロンド美女と球場をあとにしたロドリゲス。通算647本塁打のスーパースターの本音と真実は、現段階では見えてこない。【四竃衛】

 ◆大リーグの薬物罰則規定

 03年からドーピング検査を導入。04年から1回目の違反で警告、2回目で15日間、3回目で25日間の出場停止となる罰則をスタート。05年には新たな禁止薬物を増やし、罰則は1回目の違反で出場停止10日、2回目で30日、3回目で60日、4回目で1年とした。06年から1回目の違反で50試合、2回目で100試合の出場停止、3回目で永久追放。だが機構は今回に関して規定を適用しない方針を示し、選手会の了解も取り付けている。興奮剤のアンフェタミンも禁止薬物に指定。今季から公式戦でもヒト成長ホルモンを摘発する抜き打ち検査を実施。