新ポスティングシステムを使ってメジャー移籍を目指す楽天田中将大投手(25)が11日、成田空港着の航空機で帰国した。約50時間、2泊4日のロサンゼルス滞在期間中に、メディカルチェック(身体検査)をはじめ、少なくともメジャー6球団との面談を行う、まさに「弾丸ツアー」。交渉期限は米東部時間24日午後5時(日本時間25日午前7時)と迫る一方で、今後は年俸総額1億ドル(約105億円)ともいわれる移籍交渉がより加速しそうな気配だ。

 成田空港に降り立った田中は、少し疲れた表情を浮かべていた。デニムシャツの上に白黒模様のニット、荷物は左手にバッグ1つだけというラフな格好だった。報道陣から「一言お願いします」の声にも対応することはなかった。口を真一文字に結び、目線を伏せて、無言のまま地下駐車場へ続く通路へ消えていった。

 8日に緊急渡米してから、2泊4日で帰国という慌ただしさだった。サポート役の前楽天広報部長、佐藤芳記氏(36)に先導され、多数の空港職員に出迎えられた後は、時折リラックスしたようにほほ笑む場面も見受けられた。

 今回の緊急渡米は、あくまでも身体検査が主な目的だったとみられる。ロス到着後は、すぐに肩や肘の権威として知られる医療施設「カーラン・ジョーブ医院」で精密検査。翌9日には、ドジャース、ホワイトソックス、カブス、ダイヤモンドバックスなど少なくとも6球団の首脳陣と高級住宅街ビバリーヒルズ市内の私邸で面談。具体的な条件提示こそなかったとみられ、チーム事情、環境面などの説明を受けた。

 関係者によれば、体に問題がないことが証明されたようで、今後は契約年数は6~7年、総額100億円前後の年俸闘争に移行することになる。田中の場合、25歳と年齢が若いこともあり、既にメジャーでもトップクラスの先発として評価されており、獲得意思を見せる各球団は、ほぼ似通った条件を提示するとみられる。判断材料となるのは、付帯条件や環境面。ダルビッシュのようなサイ・ヤング賞の投票順位とリンクする契約年数をはじめ、家族の日米間往復費用、住宅や自家用車の補助、さらに専属トレーナーや通訳の処遇など、表面的な金額以外の条項が、決め手となる可能性はある。

 米東部時間24日午後5時(日本時間25日午前7時)の交渉期限まで残り2週間。田中は今後、17日まで関東での自主トレを行い、交渉の行方を見守ることになる。