<カブス4-1ロッキーズ>◇28日(日本時間29日)◇リグリーフィールド

 【シカゴ(米イリノイ州)=佐藤直子通信員】渡米3年目で節目の白星を刻んだ。カブス和田毅投手(33)がロッキーズ戦に先発し、7回を5安打1失点。念願のメジャー初勝利を飾った。ダメなら戦力外通告も覚悟した3度目の背水マウンドで、1四球と制球力も取り戻した好投に、本拠地のファンからスタンディングオベーションを受けた。

 三ゴロでゲームセットの瞬間、ベンチで戦況を見守った和田がホッとした笑みを浮かべた。勝利のハグをかわした守護神ロンドンに促されてグラブの中を見ると、ウイニングボールが大切に収められていた。「いい当たりを(守備が)すべて捕ってくれましたし、打線も中盤で点を取ってくれた。すごくチームから気持ちが伝わってきたし、この試合をむげにはできないと、自分を奮い立たせました」と感慨に浸った。

 2度目の昇格を果たした23日パドレス戦では4四球と制球に苦しみ、5回途中で5失点。7月31日のトレード期限が迫り、藤川のメジャー復帰が間近と伝えられる中、「最悪、今日がメジャー最後の登板になるかもしれない。だったら、今までやってきたことを出すだけ」と決意を胸に、本拠地のマウンドへ向かった。

 1回は3者三振、2回も3者凡退と絶好の立ち上がり。この一戦に懸ける思いを感じたベーカー捕手も事前に、傘下3Aアイオワで和田とバッテリーを組んだホワイトサイドに連絡。投球の傾向と長短所について予習を重ね、伸びのある速球とチェンジアップを織り交ぜた配球で、6奪三振1四球と好リード。和田は「うまく配球してくれた。すごく投げやすかったですね」と感謝した。

 試合後、頭に浮かんだのは、当時所属したオリオールズの試合を家でぼーっと見ている2年前の自分だった。12年に左肘の靱帯(じんたい)再建術に踏み切り、投げたくても投げられず、復帰絶望の不安にも襲われた。「元に戻るだけではダメ。それ以上の球を投げられる体の使い方を見つけないと、やっていけない」と自分を鼓舞し、リハビリに励んだ。この日最速は91マイル(約147キロ)と、ソフトバンク時代の全盛期に迫るものだった。

 日本では通算107勝の実力者が、メジャー3年目でやっと手にした1勝に「本当にすべての方の後押しのおかげ」と感謝でいっぱいだった。かすみ夫人と愛娘、そして両親が客席から声援を送る中でつかんだウイニングボールに、「きっと娘に渡すでしょうね。ようやく勝って、これがスタート」と巻き返しを誓った。

 ◆カ軍新人最年長勝利

 和田の33歳157日での勝利はメジャーデビュー年の勝利投手としてはカブス史上最年長。1938年9月24日にバンス・ページがカージナルス戦で記録した33歳9日を76年ぶりに上回った。