<ワールドシリーズ:ロイヤルズ2-3ジャイアンツ>◇29日(日本時間30日)◇第7戦◇カウフマンスタジアム

 3勝3敗で迎えたワールドシリーズ(WS)第7戦は、青木宣親外野手(32)が所属するロイヤルズがジャイアンツに1点差で敗れ、85年以来29年ぶりの世界一を逃した。「2番右翼」でフル出場した青木は、3打数無安打1四球。頂点に届かず、試合後は悔し涙を流した。

 まさに、あと1歩だった。1点を追う9回裏2死三塁。同点への、世界一への願いがついえた瞬間、一塁側ベンチで祈るように見守っていた青木は、思わず天を仰いだ。「冷静に言葉を出すのも難しい」と漏らした試合後の会見。最高の舞台に立てた充実感は残っても、目標に届かずに終わった虚脱感に襲われた。

 「ピリピリするような緊張感の中、これだけのファンの前でプレーできて、心躍るような気持ちだった。純粋に野球をやってる時のような気持ちにさせられました。気持ちが野球に対して真っすぐに向き合えるようになったというか…」。努めて冷静に試合を振り返ろうとしても涙をこらえられなくなり、会見を一時中断した。それほど、この一戦にかけていた。

 メジャー3年目。本領を発揮するには、絶好のタイミングだった。元来、野球エリートの道を歩んできたわけではない。宮崎・日向時代は甲子園出場経験もなく、早大入学時も同期の鳥谷(阪神)らの脇役からスタートした。ヤクルトにはドラフト4位で入団し、メジャー1年目もベンチスタート。だが、環境に適応し、確実に結果を残すことで、自らの地位を築き上げてきた。だからこそ、今年のチャンスは、逃したくなかった。「プラスに取れば、この経験で自分が飛躍すると確信してます。必ずいい方向に行くと思ってます」。悔しさをのみ込むように言った。

 契約切れとなる今オフ。来季の動向は未定でも、見据える目標は再認識した。「しびれるような状況で野球をやれることが、すごくうれしかった。またこの舞台に立ってみたい。素晴らしいポストシーズン。幸せでした」。世界一リングには届かなくとも、約1カ月間のPSは、青木にとって、お金では買えない、宝物のような時間だった。【四竈衛】