【サンディエゴ(米カリフォルニア州)9日(日本時間10日)=四竈衛、佐藤直子通信員】カブスからFA(フリーエージェント)になった藤川球児投手(34)に対し、13年世界一のレッドソックスが獲得に動いていることが、分かった。すでにレ軍は代理人側へのアプローチを開始。移籍が実現すればクローザー上原、セットアッパー田沢との3人で日本人リレーが実現する可能性も出てきた。

 レッドソックスの動きは、極めて迅速だった。13年6月上旬に「トミー・ジョン手術」と呼ばれる右肘靱帯(じんたい)の再生手術を受けた藤川の回復度や評価は、必ずしも一定していない。それでも、無事に復活した藤川に対し、早々とアタックを始めていたのが、レ軍だった。

 というのも、今季のレ軍は、昨季の世界一から一転し、ア・リーグ東地区で最下位に沈んだ。そこで今オフは、名門再建へ向けて本腰を入れて補強に着手してきた。ワールドシリーズ終了後には、契約満了となった上原と2年契約を交わしたのをはじめ、野手ではサンドバル、ラミレスの強打者獲得に成功。今後は先発をはじめ投手力の整備へと段階を踏んでおり、他球団に先駆けて藤川に触手を伸ばし始めた。

 今年8月6日、手術以来約1年3カ月ぶりにメジャーへ復帰した藤川にすれば、どのチームであれ、将来的にクローザーを目指す姿勢に変わりはない。今季は15試合で救援し、防御率4・85。長期のブランクと不規則な起用法もあり、納得できない半面、着実に自信も取り戻した。ただ、互いに尊敬し合う上原と、クローザーの座を争うことは本意ではない。08年北京五輪時には「球児・浩治」コンビとしてチームを盛り上げるなど、互いの信頼感は厚く、一緒に世界一を目指す魅力もある。さらに、田沢との3人で7回以降を任されるとなれば、史上初の「日本人3人リレー」も実現する。

 藤川に対しては、メジャー移籍した12年にも獲得に動いたエンゼルスをはじめ、レンジャーズなど複数球団が興味を示しており、今後は具体的な条件提示に移行する見込みだ。今オフのレッドソックスは30球団で最も積極的に補強を進めているだけに、藤川にも好条件で攻勢をかけることになりそうだ。

 ◆藤川球児(ふじかわ・きゅうじ)1980年(昭55)7月21日、高知県生まれ。高知商から98年ドラフト1位で阪神入団。05年セットアッパーとなり最優秀中継ぎ投手賞。06年から抑えに定着し、07年、11年には最多セーブ投手。

 12年オフ、海外FA権を行使してカブスと契約。同年6月に右肘手術を受け、今季は8月に復帰、15試合登板した。182センチ、86キロ。右投げ左打ち。

 ◆球児浩治

 藤川球児と上原浩治は06年WBCで初めてチームメートに。上原は先発として2勝、藤川はセットアッパーとして4試合で1敗。07年の北京五輪予選(アジア選手権)では、ともに救援投手として「球児浩治」を結成。決勝リーグ韓国戦では上原が1点差を逃げ切るセーブ。同台湾戦では8回藤川→9回上原のリレーで締めくくり、五輪出場を決めた。08年の北京五輪では上原が2試合で1セーブ、藤川は4試合に投げて防御率2・25だった。

 ◆レッドソックスの現ブルペン陣容

 抑えの上原が2年契約で残留し、セットアッパーでは来季メジャー6年目の田沢が2年連続で71試合に登板し防御率2・86と安定。だが今季加入した通算49セーブの右腕ムヒカが期待を裏切り、左腕レインは好成績も30試合の登板にとどまり、まだ未知数な面がある。上原と田沢を除いては、信頼できるリリーフがおらず、大幅な補強が急務。だが今季途中で放出した左腕ミラーと再契約を試みたが宿敵ヤンキースに奪われるなど、補強は難航している。

 ◆今FA市場の救援投手動向

 ヤンキースからホワイトソックスに移籍した抑えのロバートソン、ポストシーズンで活躍しオリオールズからヤンキースに移籍したミラーら、トップクラスは12月に入って所属先が決まり始め、市場はこれから動いていく。今季25セーブの抑えジャンセン(ブルージェイズFA)、防御率1・87の右腕ネシェック(カージナルスFA)、23セーブの右腕ロモ(ジャイアンツFA)ら、好投手が多く残っている。

 ◆日本人選手3人以上在籍のメジャー球団

 今季はヤンキースで3人が所属。黒田博樹投手、田中将大投手、イチロー外野手の3人がそろった。投手のみの3人以上は09年レッドソックスで、松坂大輔、斎藤隆、岡島秀樹、田沢純一の4人がチームメートだった。