<ア地区シリーズ:レイズ6-2ホワイトソックス>◇第2戦◇3日(日本時間4日)◇トロピカーナフィールド

 【セントピーターズバーグ(米フロリダ州)3日(日本時間4日)=高宮憲治、木崎英夫通信員】レイズ岩村明憲内野手(29)が逆転決勝2ランで、ア・リーグ優勝決定シリーズ進出に王手をかけた。ホワイトソックスとの地区シリーズ(5回戦制)第2戦は、1-2とリードされた5回1死一塁、岩村が左腕バーリーから左中間スタンドに逆転2ランをたたき込んだ。鳴りやまぬ大歓声に岩村はカーテンコールで応えた。試合は東海岸のゴールデンタイムで中継されており、全米のメジャーファンに力を示した。第3戦は5日(日本時間6日)にシカゴで行われる。

 「AKI」の名を全米に知らしめる一発だった。5回1死一塁、岩村は昨季のノーヒッター左腕バーリーの外角カットボールを強振。打球はアーチを描いて左中間最深部のスタンドに飛び込んだ。あそこまで飛ばせるのか-大観衆がどよめく。二塁手前で本塁打を知らせるホーンを聞くと、ポーンと手をたたいて走るスピードを緩めた。

 ベンチではナインにもみくちゃにされた。直後、球場全体からすさまじい「アキ」コールが起こった。すでに次打者の打席が始まっているのに鳴りやまない。2球目が終わったところで岩村はベンチ前に出るとへルメットを上げてカーテンコール。球場が揺れた。「気持ち良かった。打席での声援に応えることができた」と喜んだ。

 間違いなくこの試合のMVPだった。3番クロフォードは「今日のアキのホームランは球団史上最高の一打だと思う」と究極の賛辞を贈った。

 今季打率2割7分4厘の岩村だが、外角に限れば3割7厘という数字を残している。この日の一打も「外に絞った結果、あそこまで飛んでくれた」と話した。左打者ながら左方向には「合わせる」のではなく、強い打球を打てるのが岩村の強みだ。ヤクルト時代もそれで量産してきた。理由を聞かれると「分かれば苦労しないけど」と苦笑いしながらも、「押し込みが効いたというか、(バットの)ヘッドが立って、走らせることができた」と説明した。第1戦はスピード、第2戦はパワーを見せつけた。

 試合後も、岩村一色だった。マドン監督への米国人記者の質問も岩村のことばかり。「彼がチームにもたらしたものは?」「彼をどうサポートしてきたのか?」。指揮官は二塁へのコンバートが大成功だったことを強調し「向上心があるし、今後もこのチームでさらに成長するだろう」と話し眼鏡の奥の目を細めた。

 岩村は逆転弾の場面を「ベリー・エキサイテッド」と英語で振り返ると、その後は通訳を通して話した。今季6本塁打のうち4本がレッドソックス戦だ。「重要な試合では集中力が増すから」と説明した。この日、米国でメジャーの試合は2試合しか行われていない。レイズの試合は東海岸のゴールデンタイムに全米に生中継された。時差がある西海岸のレッドソックス戦は始まっておらず、野球ファン注目の中で強烈な輝きを放った。

 レイズが圧倒的有利に立ったことは間違いない。だが岩村は「シーズン通り、1つ1つという気持ちでやれるかどうかが勝負」と表情は引き締めたままだ。決勝弾の感触を思い出すのは、もっと勝ち進んだ後でいい。【高宮憲治】