【ニューヨーク6日(日本時間7日未明)=大塚仁】ヤンキース松井秀喜外野手(35)がニューヨークに祝福された。歓喜のワールドシリーズ制覇から2日、チームはブロードウェーで優勝パレードを行った。摩天楼に紙吹雪が舞う中、沿道のファンは松井にMVPコール。マンハッタンの英雄は笑顔で応えた。一方で、前日からフリーエージェント申請がスタート。ヤンキース残留に向けてライバルとなりそうな有力選手が次々と名乗りを上げた。

 万感の思いで松井は手を振り続けた。白いシャツの上にグレーのジャケットを羽織り、ノーネクタイのリラックスした表情で最高の瞬間を味わった。7年間の苦楽を共にしたカーロン通訳やチームメートらが同じ特別仕様車に乗ったが、その中でMVPの松井は一番高い場所を独り占めした。パレード出発直前には、両手のこぶしを握り締めながらガッツポーズ。体全体で喜びを味わった。

 9年ぶりの優勝パレードを祝うように、ニューヨークの朝はきれいに晴れ渡った。パレードはマンハッタン南端のバッテリーパークを出発。ブロードウエーを北上し、シティーホールまでの約1・3キロをゆっくりと進んでいった。沿道はファンでびっしりと埋まり、空には紙吹雪が舞った。3期目の当選を果たしたばかりのブルームバーグ市長もパレードに駆けつけた。FOXテレビでも生中継。ニューヨークが街を挙げてヤンキース一色に染まった。

 シリーズ終了翌日も多忙を極めた。CBSの人気番組「レイト・ショー・ウィズ・デービッド・レターマン」に緊急出演。司会のレターマンが「松井は来年戻ってくるかな?」とラブコールした直後に優勝トロフィーを持って登場すると、大きな拍手で迎えられた。「おまけですよ。一瞬出ただけだから」と照れたが、MVP効果はやはり絶大だった。

 メディアのお祭り騒ぎは想像以上。街を歩けば「コングラチュレーション」「グッドジョブ」などの言葉をしきりに浴びせられた。「これだけニューヨークの方が喜んでいるのを見ると、ヤンキースってすごい存在なんだと改めて感じる」と成し遂げたことの重大さも肌で感じていた。

 同時に4年契約が満了した松井のオフシーズンも始まった。シリーズ終了翌日からヤンキースとの独占交渉期間がスタート。19日(日本時間20日)までに再契約に至らなければFAとなり、他球団との交渉が解禁となる一方でヤンキース残留の可能性は低くなる。

 「ニューヨークが好きだし、ヤンキースが好き」との言葉に偽りはない。ただ契約内容にかかわらず残留を希望しているわけではなく、年俸や守備機会などの条件がそろうことが必要となる。ニューヨークと松井の「相思相愛」は微妙な状況の中で揺れている。