日本ハム斎藤佑樹投手(26)が、激戦の開幕ローテーション争いに本格参戦した。ヤクルトとのオープン戦に3番手で登板。3四球と乱れて2失点も、4回を2安打1三振。今キャンプ最速143キロをマークし、丁寧に要所で変化球を織り交ぜる力強い内容で64球を投げ切った。栗山監督ら首脳陣も高評価。6人予定の開幕からの先発陣の絞り込み段階に突入したが、候補の9人のうちの1人に残るアピールだった。

 執念でチャンスを広げた。斎藤がサバイバルレースの命綱を太くした。調整ではなく、魂を込めた64球だった。現状の立場が分かる出番だった。先発は5歳年下で4年目、同じ右腕の上沢。同じ先発候補なら年功序列、年齢の高い順に登板するのがチームのセオリー。3番手で巡ってきた登板機会に、すべてを悟っていた。「点を取られないこと。結果を出すこと」。強く胸に刻み、言い聞かせた。

 惜しみなく、等身大で戦った。5回2死から雄平に外角低め143キロをはじかれる。左翼線二塁打。いきなりのピンチで迎えたのは、直前の4回に本塁打を放っていた畠山。初球からすべて変化球で追い込み、カウント2-2からの6球目。狙い通りのコースではなく「抜けました」という、117キロのスライダーで見逃し三振に切った。全盛期の宝刀で、仕留めた。

 価値があった。今キャンプで直球に似た軌道から曲がることができるように、修正に取り組んできた球種。「スライダーでストライクが取れたのが良かった」と配球の生命線になる、仕上がりに手応えを得た。今季初めてシュートも試した。3者凡退の7回、先頭の代打飯原を豪快に詰まらせる三ゴロ。小さな変化の持ち球も生きた。カットボール、フォークも有効に攻めきった。

 マウンドに残っていた軌跡も、発奮材料になった。ヤクルト先発は、右肩の故障からの復活を期す由規。斎藤も12年の右肩関節唇損傷からカムバックし、復権を目指している。由規とは面識があり、会話をしたこともある間柄。「あれだけスピードを出せていたし、0点に抑えた。僕も見習わないといけないと思った」。姿が重なるようなシーンを目に焼き付け、斎藤も勇気をもらった。

 狭き先発枠の争いに、踏みとどまった。6回の先頭打者からの2者連続四球など一時は乱れたが、何とかまとめた。栗山監督は「たわけ者! ボールが良かっただけに、もったいない」と注文も付けながらも、褒めた。オープン戦2試合が終了。絞り込む可能性もあったが、現状の先発候補9人の1人に残った。斎藤は「打者と(戦う)という点では良かった」と、うなずいた。決死の思いで臨む5年目の春へ、全身全霊で向かう。【高山通史】

 ◆日本ハムの開幕ローテーション争い 開幕投手は、昨季チーム勝ち頭の大谷が20日に栗山監督から通達され、内定。来日2年目のメンドーサは昨季、7勝13敗と負け越しはしたが試合をつくれる安定感が持ち味。昨季8勝の中村と上沢、同7勝で右太もも内側の張りのためリハビリ中の浦野も有力候補に挙がる。続くのは昨季の開幕投手で12年MVPの吉川。武田勝と木佐貫のベテランコンビも好調を維持。大谷を除く、斎藤を含めた8投手がキャンプ中の実戦で結果を残しており、激しい開幕ローテーション争いとなっている。