3月10、11日(東京ドーム)の欧州代表戦に出場する野球日本代表「侍ジャパン」のメンバーが16日に発表され、19歳の松井裕樹(楽天)が「侍ジャパン」に初選出された。

 高3時にU18ワールドカップに出場して以来のJAPANユニホーム。“エース”として3試合に投げ、準優勝に貢献した松井が、一流のプロ選手たちに混ざってどんな活躍を見せてくれるのか楽しみだ。

 27試合4勝8敗という昨季の数字には、僭越ながら(個人的な意見を言うと)「物足りない」「もっと勝てたはず」という感想。高2夏甲子園の活躍を筆頭に、松井を長く取材している記者の1人として彼の持つポテンシャルはこんなもんじゃないと思っている。「もっと勝てたはず」と感じたのは、終盤戦になってから松井が力を発揮した点に由来する。9月16日に本拠地・コボスタで初勝利(3勝目)を挙げるとチームはここから初の5連勝。松井もノッていた。4勝目はV目前のソフトバンクから。大隣との投げ合いでつかんだ。さらに言うと10月5日の自身“最終戦”(札幌D)。稲葉篤紀引退試合で盛り上がる「特別アウエー状態」の中、大谷翔平と投げ合って4安打1失点1四死球でプロ初完投。0-1で負けたが、四球で崩れることなくスタミナも十分。今季最高の投球だった。松井もこの試合について「プロに入って、初めて心から悔しいと思いました」と語り、「最後に悔しい気持ちを残して終われてよかったです」と、来季に向けた課題を口にしていた。

 既報のとおり、秋季キャンプでは古典的なタイヤ引きトレで下半身を強化し、年明けすぐの自主トレでは先輩・田中将大、則本昂大、辛島航らと沖縄で練習。空振りの取れるスプリットを田中から伝授されたことは周知のとおり。スライダー、チェンジアップだけでは終盤に攻略されてしまうと考えたからだ。

 自主トレ後に松井に会った。体が二回りほど大きくなっていたことに驚かされた。

 「辛島さんに言われてぇ~、食べましたよぉ~、トマトも!」

 得意げに語る顔は充実感にあふれていた。憧れの先輩たちと2週間以上共同生活して得たもの。それは過酷な練習メニューについていけたことはもちろんだが、3食を共にしたことで変わった食への意識だった。今までいっさい手をつけてこなかった生野菜を食べたと聞いた時、大げさではなく、松井の「本気度」が伝わってきた。ふくらはぎの太さを測らせてもらうと「45センチ」。高校時代から測ってきたが3センチも太くなっていた(ちなみに174センチ男性の平均の太さは35センチ)。小柄ながら152キロをはじき出す松井のダイナミックな投球フォームは、このふくらはぎが支えていると言っても良い。十分な栄養とトレーニングによって仕上がったパンパンのふくらはぎを見て、侍ジャパンでの活躍がますます楽しみになった。

 …と、松井のジャパン入りに喜んでいたら、デーブ大久保監督の「リリーフ構想」の報道が入ってきた。22日のオープン戦で好救援を果たし「“8回”松井案」を本人も意気に感じている様子だと言う。

 「今年は143回ですね! そのために最低7回は投げたいです」

 年明けすぐ、数字をはっきり口にし「規定投球回クリア」の目標を掲げて準備を進めてきた本人の言葉を思い出すと、正直、残念な気持ちがぬぐえない。松井ファンを取材すると「いつ投げるかわからないリリーフは絶対に嫌。新幹線の切符を予約して見に行く計画が立てられない」、「監督の『毎日見たい』よりも、私たちは『週1回、先発で見たい』のよ!」。反対の声が多かった。

 大久保監督の構想は堅いと見受けられるが、ファンとの「一致団結」も目指すならこんな声があることも頭の片隅に入れていただけたらと思う。コボスタ宮城に足を運ぶファンは、神奈川から遠路はるばるやって来る松井ファンも大勢いるのだから。【樫本ゆき】

 ◆樫本ゆき(かしもと・ゆき) ライター&エディター。94年日刊スポーツ出版社入社。「輝け甲子園の星」「プロ野球ai」などの編集に携わり、99年フリーに。西部日刊スポーツ新聞社契約記者としてアマ野球、レジャー記事を担当。2012年創刊の季刊誌「ベースボール神奈川」の編集長を務める。